複雑・ファジー小説

Re: 世界と一緒だから ( No.15 )
日時: 2012/07/22 18:23
名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)

【壱話め。 君のためと綺麗事を言う僕を許してください 6】


 低いトーンの声から、なにかあったんだろうと容易に想像できた。星野は、何か事情がない限りはいつも、明るくてよく通る少し高めのトーンで喋るから。

「なにかあったの?」
「……あの子、兎崎ってさ。1年の時に虐められてたでしょ? あたしさ、助けようと思って情報集めたりしてたんだ。でもさ、原因がわからないんだ。それどころか、犯人すら見つからない。イジメにあってるって話だけが一人歩きして、証拠は何一つ見つからない。その間にあの子、笑わなくなって……」

 星野は、悔しげに顔を歪めながら箸を強く握りしめる。笑うときじゃないってことくらい理解しているが、口角があがる。そうだ、星野終って奴はこういう人間だった。無駄に責任感って言うか、正義感が強い。だからといって勧善懲悪、みたいな思考回路の奴なわけではない。ただ、救えるならば救いたいと願う、実に身勝手な善人。そんなところが気に入ったから、今もこうしてつるんでる。

「星野ですらわからない犯人、か。いいよ、弁当任せて」

 だからとりあえず、心にもないことを言っておく。友人関係って、難しい。