複雑・ファジー小説

Re: 僕の世界と愛情と ( No.2 )
日時: 2012/07/15 13:41
名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)

【零話め。 昔の話を少しだけ 2】


 あの日も、やっぱりじりじりと太陽が照りつけていた。蝉もミンミンミンミン鳴いていて、お前ら気合い入りすぎだろうと悪態をついた記憶がある。未だに、夏になるとあいつらがハッスルし始める理由が僕には理解できずにいる。
 そんな中僕が連れて行かれたのは、山奥のプレハブ小屋もとい生き地獄だった。ああ、そうだよ。地獄以外に、あれを形容する言葉は僕の少ない語彙じゃ見つからない。当時8・9歳だった僕には、あまりにも残酷であまりにもグロテスクで。世界と手を繋ぐのすら恥ずかしがるような僕が歪むのは、簡単だった。
 扉の先にあったのは、無数の真っ白な死体。どれもこれも、当時の僕と同じくらいの女の子だった。みんな、足をぐったりと投げ出した体制だった。彼女たちにこびりついていた白い何かの正体は、今ならイヤでもわかってしまうだろう。小屋中に充ちた、鼻をつくような生臭い香りと腐臭も、そうだ。
 僕の最愛の世界は、その奥の奥のテーブルの上にいた。縛られ、目隠しをされて。実の父親に体をまさぐられて。イヤでも漏れてしまう声を、幼なじみに聞かれて。見つめられて。彼女は、何を思っていたのだろうか?