複雑・ファジー小説

Re: 世界と一緒だから ( No.28 )
日時: 2012/08/02 14:11
名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)

【参話め。 オトコノコの事情 5】

 しかし僕は、「竜胆さん大好き!」なんて言って腰に抱きついてくるこのお人形のようなコイツが、大の苦手だ。嫌いとまではさすがにいかなくとも、どうしても受け入れられない。のに、はねのけて興味を無くすこともできない。……押しの強さのせいか。それとも、コイツ……黒谷光が色々言いながらも、世界には危害を加えないからか。どちらにしたって、コイツの「大好き」に応えられる気はしないし、応える気も全くない。

「……なぁ、黒谷」
「光、ですよ。そう呼んでくれなきゃ、答えてあーげない」

 ぷく、と頬を膨らませて上目遣いに見つめてくる黒谷に、ため息を吐く。面倒な奴。僕がうざったいと思っていることも、それでも呼ばなくてはいけないことも、全部知っての行動。賢しい奴だからこそ、嫌いになれないのかもしれない。

「……光」
「なんですかぁ? えへへー、イヤイヤながらも名前呼んでくれる竜胆さん、大好きです! さ、何でも聞いてくださいな?」

 頬を赤くして笑う黒谷は、なんだか可愛らしかった。探せばいくらだって相手はいるだろうに、何で僕なのか。叶わない恋を抱き続けるなんて、理解不能だ。