複雑・ファジー小説

Re: 世界と一緒だから ( No.30 )
日時: 2012/08/03 19:41
名前: 白沢祐 ◆xoPT2KzXZY (ID: khvYzXY.)

【参話め。 オトコノコの事情 6】

「光は、昨日の五限目は教室にいたよな?」

 それでも、きっとコイツが僕を好き続けるのは変わらないだろうし、今大切なのはそこじゃない。とりあえず一番大切だろうことを聞くと、黒谷はキョトンとして首を傾げた。

「うん、いましたよ? 現国が自習になって助かりました。ボク、現国苦手なんです。……でも、なんでそんなこと聞くんですかぁ?」

 不思議そうに僕を見つめる黒谷の頭を、そっと撫でる。それは、僕と黒谷の間だけで通じる追求禁止の合図。世界と僕との関係とか、僕の性癖とかを聞いてくるときに使っていたら、いつの間にか定着していた。黒谷は、真っ黒なビー玉みたいな瞳でしばらく僕を見ていたけれど、軽く笑いかけると気持ち良さげに目を閉じた。わかりました、というアピールだ。物わかりがいい子だから、嫌いになれない。

「だってさ、星野」
「……ああ、わかってる」

 星野は軽くうなずくと、「ごめんな」と微笑んだ。いつもとは違う弱々しい笑みが、痛かった。

「ボクでよければ、力になりますよ? だから、そんな顔しないでください」

 星野を見て、小さく首をかしげた黒谷を、時野はずっと睨んでいた。