複雑・ファジー小説

Re: 生死彷徨う精神性【コメント大歓迎】 ( No.4 )
日時: 2012/08/12 15:31
名前: magenta⇔path ◆7UgIeewWy6 (ID: My8p4XqK)

<事故後1日目>

[ピンポーン……]

「はぁーい、あら雛子ちゃん。ちょっと待ってねー。千帆、千帆! 雛子ちゃんよ!!」

「あ、おばさん。そういえば、千帆って今日から行けるんですか?」

「うん。ちょっと精神的に参っちゃってるんだけど、千帆がどうしても行きたいっていうから」

「あ……そうですか」

「ごめん、雛ちゃん」

「おはよう、千帆。大丈夫?」

「うん、平気だよ。じゃお母さん、いってきます」

「いってらっしゃい」

きっと雛ちゃんにはばれているだろう。平気だなんてそんなわけないって。
あぁ……また雛ちゃんに迷惑かけちゃったな……ごめんね、雛ちゃん。

「……帆……千帆!! 聞いてる?」

「え…? あ、ごめん。聞いてなかった…」

「やっぱり、今日は休んだほうが良いんじゃないの? 事故った翌日に登校するなんて普通じゃないよ」

「私は普通じゃないっていうの?」

「あはは、そんなこと言ってないし。……壮真先輩の家行けなくて残念だったね」

「いや……行けなくてよかったの」

「え?」

「私事故に会った時にね薄眼でちらっと先輩の家の方見たの。家は見えないけどね。そしたら曲がり角から壮真先輩と多分3年生の綺麗な女の子と歩いてた。壮真先輩、少しだけこっち見たけど不快そうな目して睨んだんだ、こっちを」

「はぁ? いや、確かに遠目から見たら誰だかわからないけどさ……。やっぱりあんな女ったらしの彼女になんかならなきゃよかったんだよ。そしたらこんな事故も……」

「雛ちゃん。それでも私、先輩のこと好きだから。そんなこと承知で彼女になったの。先輩から告白されたとき、嬉しかった。あの事故が無かったら女連れの先輩と鉢合わせして恥ずかしい思いしなきゃいけなかったもの。神様のちょっとした悪戯が重なっただけだよ」

「……千帆。あんたなんでこんなときだけそんなにポジティブ思考できるの? でも千帆がそれでいいなら、あたしは応援するし、どんなことだってするから。何でも言ってね、躊躇とか遠慮とかいらないから」

「うん、ありがとう、雛ちゃん」

会話はそこで途切れた。駅までの道のり。駅から電車で15分。その間も私と雛ちゃんの沈黙は続く。お互いに気を遣っているのだろう。
午前中二人きりで喋ったのは教室に入る時、別のクラスだから「じゃあね」って手を振ったその時だけ。
クラスが違うと話さない、というより話せない状況の方が多いから、今の私たちにはよかったのかもしれない。
けれど、私は1人ぼっちな気がしてならなかった。
席について「はぁ……」なんて溜息を出したら、隣の席から声が聞こえた。いつもは話さない、秀才君の声。

「昨日、大丈夫だったか」