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複雑・ファジー小説
- Re: 不死鳥の少女 サキュリナ キャラのセリフ音声UP! ( No.12 )
- 日時: 2012/07/27 16:37
- 名前: からあげ ◆L/fXxGshUc (ID: v/O9fUEE)
- 参照: http://koebu.com/koe/631280789f0c77c3c833a2009fbba9b6aeb49f2c
女は手に持っていた皿を、飾ってあった場所へ静かに戻した。そして、男のほうを見やると、ゆっくりと歩み寄っていった。
「じゃあこうする? あたし、あんたの命を八百万で買うわ。これでどうかしら?」
挑発的に舌なめずりをすると、自分の唇を指で撫でた。毒々しい紫色の爪は、長く先端が尖っている。
女は男の目の前で立ち止まると、細長い指で男のアゴを持った。
「わかる? あんたの言ってることはそういうこと。こんなでかい家に住んでんだから、千万くらいあるんでしょ? 出し惜しんでんじゃないわよ——それとも本当にあたしに命を売るのかしら、たかが八百万のやっすい金で」
怒鳴るわけでもなく、笑いながらでもなく、無表情でそう言った。男の無表情はわずかに崩れかけていた。女の黒い瞳に、冷たく見つめられていると、それだけで背筋に悪寒が走った。こんなに美しい女なのに、近づかれて嫌気や恐怖を感じるのは本当に不思議だった。
「……わかった」
妥協した男は口を開いた。
「暗殺に成功したら……きちんと千万、支払おう」
女はその言葉を聞いて、満足げに微笑んだ。手を離すと、机の上の布袋に手を伸ばした。
「あたしに失敗なんてありえないね。来月の今日、金を準備しときな」
重い袋の口を掴むと、女はそう吐き捨てて部屋を出て行ったのだった。
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