複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.100 )
- 日時: 2012/08/14 22:37
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
- 参照: 剛憲さん出番少なくてごめんなさい(汗)
「あの、佳夢君。」
「ん?」
屋上に30分は居座っていたころ。
愛子が急に口を開いた。
「あの、お礼とか、言えそうにないかも。
これでも、自殺願望者だから。でも、お礼はさせて。」
「お礼?」
これまた、ご都合主義であった。
しかし、困ってることがあるとはいえ、それを今頼むべきかは定かではない。
場違いな気もする。
「なんでも、いいよ。」
「なんでもとはまた大きく出たな。大したことはしてねーぞ?」
「うん。」
あっさりと肯定されてしまい、少し傷つく。
しかし、なかなか打ち解けて着てるのではないかと感じた。
「でも、お礼はしたい...。」
「まあ、お前がそこまで言うならな...。」
四月二日。
学校が終わり、佳夢は愛子を連れ、家へと向かっていた。
佳夢の頼みはこうであった。
「俺の家に来い。」
「...それは、どういう意味で。」
「訪問という意味でだ。お前はさっき、死ぬための命か、
生きるための命かの二択で迷ってたな。俺はどっちかというと前者派だ。
でも、人の考えなんて、大抵あてにならん。だから、家へ来い。」
「え?でもいきなり人の家に行くってのは...。」
「大丈夫、殆どお出かけ中だから。」
「え、殆ど、って?なにが?」
「親族。一緒に暮らしてる。」
「一体何人いるの?」
「さあ。数えたことねーな。」
愛子は信じられないような表情をしたが、
それでも何とか来てくれた。
「うちは結構、慈愛に満ちたとこだから。愛されること必至だぜ。お前。」
家に向かう道中で、愛子に向かって話しかける。
「佳夢君...。私、人見知り激しいんだけど。」
「知ってる。でも、他人を抱擁する優しさがあれば問題なしだ。」
「えー...。」
不服そうであるが、それでも無理やり連れていく、と佳夢は決意していた。
家の前に着いて、愛子は絶句する。
想像はしていたが、想像を超える、オーラをかもしだしていた。
「ただいまー。」
大きな門をくぐりながら佳夢が腑抜けた声で言う。
それに続いて、愛子も入る。
玄関に着くと、廊下を走る足音が聞こえてきた。
「おかえりお兄ちゃ——うわ!誰その美人さん!はじめまして!」
出会いがしらに勢いよくあいさつされ、愛子は困惑する。
「ああ、これは妹の真夢。」
出てきた真夢を指さしながら佳夢は言う。
妹をこれ呼ばわりとは、これいかに。
「で、お兄ちゃん!この人だれ!?お兄ちゃんのコレ!?」
そう言って真夢は小指を突き立てる。
真夢の額に、チョップが直撃する。
「痛い!」
「だろうな。それに彼女じゃねーよ。カウンセリングしに来たんだよ、この人は。」
「え、そうなの!?佳夢君!?」
「俺の設定上では。」
「お兄ちゃん痛いよ!」
痛がる真夢を華麗に無視し、佳夢は中へ上がって行った。
愛子は真夢をスルーする事は出来ず「大丈夫?」と声を掛けた。
「大丈夫ですよ。」
ケロリとしていた。
「えっと、私、押崖愛子って言うんだけど...。」
「そうなの?よろしくね、愛子さん。」
真夢はそう言うと、佳夢が行った場所とは別の方向へ走って行った。
佳夢の行った道を歩いていくと、前から一人の老人が歩いてきた。
「こ、こんにちわ。」
「おやおやこんにちわ、お嬢さん。」
老人は柔らかな笑顔であいさつをする。
「名前は?」
「えっと、押崖愛子です。」
鎌奈剛健。
七十九歳。男。大叔父。道場師範。獅子座のA型。
高弟の人数、九十人。そのうち彼に剛健とまともに戦える人数、零人。
一族きっての羊の革被り。
「こんな変人のたまり場に、何か御用かな。」
「え、えっと、あの、佳夢君に連れてきてもらって...。」
「そうか。まあ、面白いものは特にないが、ゆっくりしていきなさい。」
「はい、ありがとうございます...。」
剛憲は二回頷き、にこやかに笑いながら、去って行った。
しかし、何故か、剛健に似合うのは、「穏やか」ではない気がした。
すると、今度は佳夢が来た。
「お、いた。誰と話してたんだ?」
「あの、剛健さんって人。」
「剛健さんか...。あの人怖いからなぁ。」
「え?怖い?」
佳夢はうなずく。
「あんな顔して、結構えげつないんだぜ。俺も太刀打ちできねえ位に。」
「そうなの?」
「まあな。ほら、行こう。」
佳夢は急かす様に愛子の肩を叩いて歩き始めた。