複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.118 )
日時: 2012/08/19 00:38
名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)

「...なぁ、佳夢兄さん。」
突如、前を歩いていた雛菊が振り返る。
「ん?」
「病院よりかはあそこ連れて行った方がええんちゃうか?」
「あそこ...?あぁ。...いやでも...。」
「実質あっちのほうが対応はええやんか。」
「そうだけど...。俺苦手なんだよ、あの人。」
「そこは我慢や。こっからも近いし、行こうや。」
佳夢はため息をついて「わかった。」と頷いた。

そしてそこから五分足らずで着いたのは、住宅街に建つ、小さな診療所。
佳夢達はそこへ入る。
「こんにちわー。」
佳夢が言うと、廊下から誰かがひょこりと顔を出した。

鎌奈萌華。
十九歳。女。叔母。美大生。乙女座のA型。
コンクールで入賞した回数、37回。去年の作品の数、84。
一族きっての楽天家。

「んー。久しぶり—。佳夢君と雛菊君。」
「おっす。」
「久しぶりやー、萌華ちゃん。どう?元気しとった?」
「まあねー。」
萌華の頬には赤や青の絵の具がついていた。
恐らく、絵を描いている途中だったのだろう。
それを中断させてしまったのなら、悪い気もする。
「あれ。誰それ?」
萌華は佳夢が抱える少女を凝視しながら言った。
「ああ。えっと...。」
「誘拐してきたんや。なにやら、大企業の社長の娘さんらしいでー。」
雛菊がにやにやと笑いながら言う。
「勝手に変な設定を作るな!」
「えっ!マジで!?私も混ぜなさいよ!身代金は!?三人で山分けね!」
「萌華も食いつくな!」
萌華は子供のような笑みを浮かべた。

「ま、どうせウチのに用があるんでしょ?」
「うん。そんなとこかな。」
「多分、いつもの部屋にいるよ。」
「わかった。ありがと。」
「おおきにー。」
廊下の奥の方へ進んで行く二人に萌華は手を振る。
「今度は私の絵も見て行きなさいよ。なんなら、モデルにしてあげなくもないわよ!」
「おう。頼むわ—。」
佳夢は後ろを振り向かずひらひらと手を振りかえす。
萌華は満足そうにうなずき、もといた場所へ戻って行った。

二人が廊下を進んでリビングへ行くと、相変わらず片付いていなかった。
「うわ...。前よりひでえ...。」
「ま、これはこれであの人らしいわ。」
何とか歩けるくらいのスペースはあり、辿り着いたのは、
リビングには不釣り合いな煉瓦の大きな暖炉があった。
そして、その煉瓦のうちの一つに触れると、ゆっくり沈んでいった。
それと共に、暖炉は音をたてて横へずれる。
現れたのは、大きな鉄製の扉。
それのドアノブに手を掛け、佳夢は横にスライドした。
そして、大きなドーム型の部屋が姿をあらわにした。
佳夢と雛菊は容赦なくそこへ入り、その部屋の中心に立つ人物を呼んだ。
「おーい。恵人さん。」
白衣に眼鏡に天パといういかにも怪しい人物は、
うつ伏せになった体をのっそり起こす。
「んあ...。今何時?」
それこそ、鎌奈恵人であった。

鎌奈恵人。
三十歳。男。叔父。元医師。射手座のB型。
患者を治す確率、100%。違法な薬の数、不明。
一族きっての秀才。

「あれ、佳夢君じゃないか。それに雛菊君も。久しぶりだねぇ。」
佳夢の父の弟である恵人はかつて天才医師と呼ばれていた。
だが、それも一昨年までの話。
萌華と結婚する際に、辞めてしまったのだ。
それを惜しむ者もいたが、安堵した者もいた。
この天才医師は、数々の問題を起こしてきた。
良い意味でも悪い意味でも。
「よく来た!で、何の用だい?」
「実はな、この子が——。」
「なんかの病気なのかい!?」
雛菊が言いかけた時、恵人が表情を一変させ食いついてきた。
「...いや、多分風邪やと思う。」
その瞬間、恵人の表情が変わった。
「なんだ、風邪か...。」
落ち込みつつ、恵人は少女を見て「そこのベットに寝かせて。」と、
部屋の端にあるベットを指さした。
「んじゃ、お薬を処方しよう。」


その頃、鎌奈家では。
「あ、みんな私に五千円ずつね。」
「また愛子さんに!?」
「愛子さん凄い...。」
「ラッキーマンもびっくりのラッキーね。」
ダウトは終わり、人生ゲームになっていた。