複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.123 )
- 日時: 2012/08/24 00:27
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
人生ゲームは二回戦へ差し掛かり、時刻が午後四時になりかけたころ。
真夢の部屋のドアが、遠慮がちに開いた。
「真夢ちゃん...。」
「あ、帆花さん!」
鎌奈帆花。
二十四歳。女。叔母。保育士。魚座のA型。
性格以外は姉似。でも成績は姉より優秀。
一族きってのネガティブ。
帆花は部屋に入ってくるとお茶を乗せたトレイを運んできて、
床へ置いた。
「ありがとう帆花さん!」
「い、いいの。」
帆花は照れてながら言った。
「そういえば、あの、佳夢君から電話、あったよ。」
「電話?」
「うん...。なんか、その、今日帰れないっぽいって...。」
「帰れない?ふうん。」
真夢はどうでもよさそうに頷くが、菜夢はそれを聞いて目つきを変えた。
やがて、帆花が出ていくと、菜夢は素早く立ち上がった。
「菊花。私ちょっと抜けるから、私の分もやっておいてくれないかしら。」
「ん?あー、了解や。」
「ありがと。」
そして、菜夢はドアの前で止まって、こちらを振り返り、愛子に手招きをした。
部屋を出ていく菜夢の手には携帯が握られていた。
愛子もそれにつられるよう、真夢に自分の分を任せて部屋を出た。
「呼び出してすいません、愛子さん。」
「いや、いいけど...。どうしたの?」
「一応あのバカ、もというちの兄はそれはそれで約束は守るタイプです。
だから、よっぽどの限り帰らないなんて愛子さんとの約束を破るような
事はしないと思うんです。」
そういえば、と愛子は思い出した。
楽しくってつい忘れていたが、佳夢が帰ってきていない。
出かけてからそれなりに時間は経っているのだが。
「だから、変なんです。なので、今から電話をしようかと。
で、一応愛子さんに来てもらったんです。
あと、あんまりこの家には来ない方がいいですよ。」
「え?もしかして、歓迎されてない...?
いや当たり前か。」
「いえ。そうではなくて、ここは厄介事の名産地ですから。」
そう言って菜夢は携帯のボタンを押した。
勝手なイメージではあるが、何故かアイフォンを使ってそうだったので、
ガラケーとは意外であった。
携帯を耳に宛て、菜夢は数秒間沈黙する。
ポケットの携帯の着信音が鳴りだす。
それを、横に倒したベッドの後ろで取出し、画面を見る。
そこには『鎌奈菜夢』の文字が表示されていた。
「なんや、妹さんからかいな。」
雛菊が横から画面を覗き込む。
「あぁ...。おい、いい加減起きろ、恵人さん。」
佳夢は横でぐったりと座り込む恵人の肩を叩いた。
「うぅ...。僕は戦闘には向いてないのに...。
こんな目に遭うなんて...。」
「なに言うてんねん、自分。原因は自分やないかい。」
「そうだっけ...?」
その瞬間。
佳夢達が持たれていたベッドが真っ二つに両断される。
両断と言うよりは真ん中を一直線に綺麗に破壊された感じであった。
何とか三人はそれを避け、部屋の真ん中へ転がる。
そしてベッドの向こう側には、机の脚だった物を持って目の色を変えた、
四十川九六はいた。
それは今から二十分前の話。
佳夢達は轢かれかけた少女をベッドに寝かせた後、
部屋のテーブル前に座り、用意されたお茶を飲んでいた。
因みに、恵人のこの趣味の悪い自室には椅子はなく、床に直に座る形となる。
恵人は鼻歌交じりに薬品棚をいじり、そこから一つ、カプセルを取り出した。
それはいかにもふつうの薬っぽいカプセルであった。
しかし、ただの風邪を治すには若干場違いな風貌な気もした。
「じゃじゃじゃーん。」
「...それが風邪薬?」
「うん。もちろん。」
「風邪薬って、粉とかやないっけ?」
「常識にとらわれてはいけないよー、二人とも。
しかもね。いいかい。これは、絶対に風邪を治す薬なのさ!」
佳夢と雛菊は二人して胡散臭いと感じた。
しかし、それを気にもせずに恵人は少女に薬を飲ませる。
「よし。これでオッケーだ。でさ、ちょっと二人に話したい事があるんだけど...。」
「え?」
恵人は少女に背を向け、こちらに向かって歩き出す。
そして、懐から一枚の紙を取出し、それを見ながら話し始める。
「この子の事についてなんだけどね。一応、
親御さんに送り届けなきゃいけないしと思って、調べたんだ。」
「へえ...。え?どうやって調べたの?」
「これがなかなか面白くてね。まあ、面白い部分は後で話すよ。
まず、この子の名前は四十川九六って言ってね。一見、どこにでもいるような子供っぽいだろ?」
「まぁ、な。それ以外、どうにも見えないし。
いやつーか、どうやって調べたんだよ。」
「でも、見た目で騙されちゃいけない。
僕がキムタクに似てても、実はマッドサイエンティストであるようにね。」
「それに関しては異議を唱えるわ。」
「で、結局は何やの?その面白い部分って?」
雛菊はめんどくさそうに聞く。
「ああ、それはね——。」
恵人が何か言いかけたとき、今まで閉じていた九六の目が開いた。
そして、すごい勢いでベッドから跳び、机の上へ着地した。
「え?なにこ——。」
雛菊が驚きを言葉にしようとしたとき、九六の脚が雛菊の顔に飛んできた。
そして雛菊は、見事に吹き飛ばされる。
「雛菊!」
九六は机を蹴り、後ろへ跳んで、壁際に立った。
九六は言葉も発せず、こちらをただ睨み続けている。
「恵人さん...。一体なにしたんだ?」
後ろの恵人を振り返り、佳夢は尋ねる。
「えぇっ!?僕は風邪薬を与えただけだよ!
...ただちょっと副作用で人間に掛けられたリミッターを外すことが出来るけど...。」
「なんでそれを言わない!」
佳夢は恵人に駆け寄って、胸ぐらをつかむ。
「違うんだ!決して好奇心じゃないんだ!
確かにリミッターを外すことはできるけど、精神状態に異常をきたすなんて、
思いもしなかったんだぁ!」
「てめぇ——!」
その時、後ろから九六が来ているのに、佳夢は気づいた。