複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.133 )
- 日時: 2012/08/29 00:35
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
白い廊下を、青年は口笛を吹きながら上機嫌に歩く。
それは、誰もが知る名曲「ボレロ」であった。
青年にとって、大変思い出深い曲である。
しかし、その美しい音色は、途端に切れる。
廊下の前の曲がり角から、ヒールを履いた女が現れた。
天都赤穂であった。
「...げ。」
青年はしまったというような表情をする。
しかし、相手からしてみればそんな表情は帽子で隠れて見えないのだが。
「...何者ですか?」
赤穂は青年を凝視しながら尋ねる。
「ここが何処か分かっていますか?」
「そりゃ、まぁ、一応はね。
泣く子も黙る、天都家のマンションだろう?
知ってるよ。つうか、デカすぎ。迷路かっての。」
青年はおどけるように答える。
赤穂は少々イラつきながらも、青年に尋ねる。
「一体、何の用?」
「そう怖い目つきすんなって。二番目の〝女教皇〟の赤穂ちゃーん。」
その瞬間、赤穂の表情が変わった。
「まさか、あなた...。」
「んー。ご察しの通り!多分ね。あーもう、可愛いな赤穂ちゃーん。
抱きしめてぇーっ。」
「なんで、戻ってきたのよ!天都家の面汚し。」
青年はびっくりしたように表情を固める。
しかし、一瞬にして元の表情に戻る。
「なんでって...。一応、俺の家だし...。」
「常に余計な真似をする人間が、天都家の名をなのっていいとでも?」
「ひっでー...。」
赤穂は本気でイライラしていた。
それは、表情から読み取れる程に。
「いいか?赤穂ちゃん。四年前の俺とは違うんだぜ?
四年前は、ただの十九のガキだったよ。それは認める。
でも、四年経った今では——。」
「全然。変わってないじゃない...。」
赤穂は青年の言葉を遮る。
「変わってないわ。今回も、余計な真似をして!
あなたが斧間陣呉をそそのかしていなければ、
斧間陣呉の誘拐はもっと早くに終わってた!」
「いやぁ、それはさ——。」
「それだけじゃない!」
赤穂はハイヒールの乾いた足音を響かせ、青年に詰め寄る。
「あなたは、もう虐殺師を辞めたはずなのに!
なんで、また虐殺師の名前で鎌奈家に喧嘩を売ったの!?」
「あのさぁ...。俺はこの家にとって不要な人間を排除してるだけだぜ?
いわば奉仕活動だよ。一番最初のナントカ株式会社の時もね。
詳しいこと忘れちゃったけど。」
「...ふざけてるの?あなたはいつだってそうだわ。
あなたの父親もね...。最低な奴だわ。」
「...ひっでぇ言われよう。」
青年は困ったように溜息をつく。
「全く歓迎されてないのね。俺。」
「...そりゃそうよ。」
「そんなハッキリと...。許してよ、赤穂ちゃん。
今回は俺、不足分も連れてきたんだぜ?」
「不足分?」
「おうよ。タロットの大アルカナってのはふつう22枚だろ?
でも、22人もいねぇって話じゃねえか。だから、勧誘してきたわけ。
つまりは、そいつと俺が入って、22の席が全部埋まるって訳だ!」
「...で、その人は何処にいるの?」
赤穂は呆れたように聞く。
しかし、青年はそれでも満足したかのように頷いて、後ろを振り向く。
「おーい、出てこい。ジャバ。」
その時、天井の壁が開き、人が降りてきた。
そこから現れたのはフードつきのジャンパーを羽織った美少女であった。
「呼んだ?」
「うん。呼んだ。よしよし。今日も可愛い。」
青年は美少女の頭をなで、そして美少女は嬉しそうに笑う。
それを見ていた赤穂の目は、汚物でも見るかのような目であった。
「そう。こいつが俺の勧誘した将来有望の殺人鬼さ。」
青年は赤穂の方を向いて美少女を指し紹介する。
「殺人鬼って...。」
「たしか、ジャバウォックとか呼ばれてるんだよなー?」
「うん!そのとーりさ!」
大人びた見た目とは似合わない、幼稚な口調で美少女は答える。
「よし!メンバー入りを果たしたところで、自己紹介言ってみよう!」
「おー!」
「私は日向音海!三番目の〝女帝〟だよ!!」
「俺の名を知りてーか?俺は天都長司!零番目の〝愚者〟だ!」
「キマった...。」
「...。」