複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.137 )
- 日時: 2012/08/31 23:47
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
「うおーっ。広いなぁ...。」
赤穂に案内された部屋を見渡し、
長司は感嘆の声を上げる。
隣の音海も驚いたように口をポカンとあけている。
「今日からここで暮らすのか〜。」
「...。」
「あれっ、赤穂ちゃん。なんか気に食わないって顔だね。」
赤穂は顔をそむける。
「にしても、なんていうか...。ここ、客室っぽいね。」
「そりゃ、来客用の部屋ですから。」
「えっ!?自分の部屋ではなく!?」
「まぁ...。あなた達の分なんて元より用意してませんし。」
「うぇ〜...。死体隠せないじゃん。」
物騒なことをつぶやいて、長司は後頭部を掻く。
音海が長司の服の裾を引っ張る。
「ん?」
「一番風呂もらっていい?」
「いや駄目だ。一番風呂は二人一緒じゃないと。」
「え〜。やだ。」
「反抗期かよ...。仕方ないな。いいよ。長旅ご苦労様。」
「イエッス!!」
音海はガッツポーズをして、風呂へと向かう。
そんな、音海を見つめながら長司は呟いた。
「うちの天使可愛いな...。」
「あなたロリコンだったっけ——?」
その頃。
そこから少し離れた住宅街。
佳夢は、愛子の家をめざし走っていた。
九六の事は雛菊達に任せて。
そして。
炎上する愛子の家へたどり着いた。
「これは...。」
息を呑んで、それを見つめる。
周りでカメラを構える野次馬の所為で、近くで見ることはできないが、
大きな炎が上がっているのははっきりとわかる。
少し視線を逸らすと、呆然と立ち尽くす愛子と、
何故か隣に立っている帆花を見つけた。
「おい、押崖——。」
愛子を呼ぼうとした瞬間。
佳夢の横を異様な雰囲気の男が通り過ぎた。
瞬時に振り返り、その男を凝視する。
ボロボロのジャケットに黒いニット帽。
怪しすぎた。
それが誰なのかは分からない。
しかし、その手にはナイフを持っていた。
その男が角を曲がった瞬間。
佳夢は無意識に男を追いかけた。
そんなに距離はなく、すぐ走ったら男が曲がった角までついた。
しかし、角を曲がった時——。
佳夢の目の前にはナイフが突きつけられていた。
「!!」
急ブレーキをかけ、直前で止まる。
あと一歩でも踏み出していたならば、
そのナイフは佳夢の肉を裂いていたであろう。
「——ほぉ。」
男はナイフを持つ腕を下げ、ニット帽をかぶり直す。
「なかなかやるようだな。とはいえ、俺もこのナイフはただの護身用だ。
どうせ上手くは使いこなせん。」
そう言って男はナイフをジャケットのポケットにしまう。
「俺を追ってきたんだろう?」
「ま、まぁ。」
「ふん。言っておくが、俺を追っても意味はないぞ。
俺はただ雇われただけさ。」
「雇われた?」
「おう。ある男に、な。その男は、何と名乗っていたかな。
まぁ、忘れた。」
どうでもよさげに男は言う。
しかし、それは重要なことであった。
「あんた、殺し屋かなんかか?」
「馬鹿な。俺は単なるホームレスだ。
しかし、今回あの家の家族を殺したのは俺で正解さ。」
佳夢は瞬時に男に掴みかかる。
男は一瞬驚いたような顔をした。
「お前を雇ったのは誰だ。言え。」
「だから、覚えて——、いや、待てよ。」
男は何か思い出したようでポケットを探る。
そして、取り出したのは手帳だった。
その手帳をぱらぱらとめくり始める。
「これに、今回の依頼主が書いてあったはず。
っと。おお、こいつだ。」
男はそのページを千切り、佳夢に渡す。
それを見た佳夢は目を大きく見開き、驚きの表情を見せた。
『四月一日。
依頼主・鎌奈刻夢
内容・押崖家の殺害』
声は出さず、静かにその事実をただ眺めていた。
正気に戻って男に質問しようとしたとき、
男は数メートル離れたところに立っていた。
「なっ!?」
先程まで男の襟元を掴んでいたはずの手にはその切れ端が握られていた。
「それじゃ、またな。」
「お、おい!待てよ!」
そう呼びかけると、男は素直に止まってこちらを見る。
早く終わらせろとでも言いたげな顔であった。
「——あんた、名前は?」
「名前、ね。本名は忘れた。ただ、仲が良かった親友から預かったあだ名ならば、
たしか、〝氏神〟だったな。本名じゃないぞ。」
氏神は念を押すように言って今度こそ、何処かへ去って行った。