複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.142 )
日時: 2012/09/17 23:02
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
参照: 珍しく佳夢メイン

そして、午後七時を回った頃。
鎌奈家は一堂に会して食事をしていた。
とは言え、何処かへ出かけている者もいるので、
いつもよりは少ない方だった。
しかし、佳夢はその中で笑顔でカレーを食べる愛子を発見し、
違和感を感じた。

——後で話しかけてみるかな...。
そんなことを思いながら、カレーを口に運んでいると、
隣に雛菊が座ってきた。
「隣ええかな?」
「もう座ってんだろ。」
「せやなー。」
うっすら笑いながら雛菊は手を合わせて「いただきます」と言った。
「しっかし、今日は散々な一日やったなぁ。」
「全くだ。八月十五日でもないのにな。」
「それはちょっと分かりにくいんちゃうか?」
「そうか?」
「でな、九六ちゃんなんやけど。」
佳夢は言われて思い出す。
今日助けた女の子の事であった。

「恵人さんから聞いたんやけど、もう熱はひいたらしいで。」
「へぇ。そいつはよかった。」
「でも、恵人さんが言っとった『面白い部分』って、
一体なんやったんやろな?」
「さぁな。」
佳夢は肩をすくめてみせた。
「ロクでもない事は確かだな。」
「九六ではあるんやけどなぁ。」
「つまんねーよ。」
溜息をつきながら佳夢はスプーンを置いて手を合わせた。
「ごちそうさま。」
「はやいな。」
「お前が遅いんだよ。」
佳夢は皿を持って立ち上がり、台所へ向かった。

流しに皿を置き、軽く水でゆすいだ。
ふとさっき雛菊に言われた九六の事を思い出す。
「明日にでも聞くか...。」
その時、水を流れる音がふいに止まった。
ふと横を見ると、琥珀が立っていた。
「ぼーっとしてたよ、佳夢君。」
「お、おう。悪いな。」
琥珀はにやにやと笑う。
「なぁに、佳夢君。愛子さんの事でも考えてた。」
「いや。そうじゃないんだが...。」
「...佳夢君ってからかい甲斐がないよね。」
「は?」
喧嘩を売ってるのかと思ったが、素のようだった。
しかし、そうは言われても、
からかい甲斐のある人間になりたいわけでもない。

「年上をからかわない方がいいぞ。」
「何言ってんの?佳夢君、いや、佳夢様をからかうなんてそんな!」
「今からかい甲斐がないって言ったろ!」
しかし、様付で呼ばれるのもなかなか悪くなかった。
「だって私は佳夢君のこと、尊敬してるよ。」
「...嘘?」
琥珀は首を横に振る。
それから悪戯な笑みを浮かべて言った。
「本当だよー。まぁ、戦闘面でだけど。」
「...だろうな。まぁいいよ。」
「ホントからかい甲斐ないねー。怒ったりしないの?」
「お前に怒ったって喜ばすだけだろーが。」
「人をマゾみたいに言わないで!」
琥珀は珍しく本気で怒ったように言った。

「いいじゃん!戦うの楽しいじゃん!」
「楽しかねーよ!」
「もう!なら、自ら挑む!」
琥珀は何処からともなく警棒を取出し、とびかかってきた。
「よっと。」
しかし、佳夢は難なくそれをよけた。
続けて琥珀が振り向こうとしたところに足を掛けた。
「うわっ!」
琥珀は後ろ向きに倒れる。
だが、その直前に佳夢の服を掴んだ。
琥珀に引っ張られ、佳夢も倒れる。
佳夢は両腕で何とか体を支えるが、琥珀は後頭部を床に打ち付ける。
「痛っ!」
そして、はたから見ればその二人の構図は、
佳夢が琥珀を押し倒しているようにも見えた。
見られてはならないと思い、佳夢は退こうとするも、もう遅かった。
キッチンの入り口から白美が見ていた。

気まずい沈黙が続く。
「...誰にも言わないよ、佳兄。」
白美は冷たい目をして言った。
「これは違う!待て、白美!」
「佳夢君ったら、大胆!」
「お前は黙れ琥珀!」
佳夢の報われない叫びが、辺りに響いた。