複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.146 )
日時: 2012/09/18 22:42
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
参照: 連続で投稿。眠い。

そして。
場面は変わり四月三日。
佳夢が目的の場所についた頃には既に午前十時であった。
それほど時間が経ったのかと、少し驚く。
ただ、これから先はさほど時間はかからない。
高架下にひっそりできた段ボールの家ともいえない家から、
氏神は姿を現した。

「よう兄ちゃん。何の用だ。」
「お前を叩きに来た。」
「そいつはご苦労なこった。」
氏神はため息を漏らし、その場に座った。
「それは、あの押崖愛子が望んだのか?」
「いいや、違う。」
佳夢は首を横に振った。
だが、首を振ったものの別に自分の憂さ晴らしでここへ来たわけではない。
「じゃ、何で来た。」
「お約束だからだよ。」
佳夢は言った。
「美少女の自殺を止めるのがお約束なように、
美少女が泣いてたら、その涙をぬぐうのがお約束だろ。」
「...果たしてそうかな?だとしても、鎌奈佳夢。
お前の親族には警察もいるだろう?そいつに俺を引き渡せばいいじゃないか。」

その指摘は実に的を射ていた。
「まぁ、そうだな。」
「...。」
「でも、それを気にしないのもお約束だろ。」
「ガキが...。」
氏神はジャケットのポケットからナイフを取り出した。
その刃先を佳夢に向ける。
「俺は、手加減はしないぜ。まだ依頼人から金をもらってない。」
「ただのホームレスじゃないって訳か。」
「あぁ。そう言っても過言じゃない。」
そう言うなり、氏神は地面を蹴り、こちらに飛んできた。
そして、目の前まで来ると、ナイフを振り回した。
がむしゃらではなく、狙って。
しかし、佳夢はそれをすべて避ける。
ただ、反撃する兆しはなかった。

氏神は一旦攻撃を止め、間合いを取る。
かなりの体力を消費したようで、息が上がっている。
「ほう...。余裕だな。」
「あんたの攻撃じゃ、俺に傷はつけられないね。」
「流石と言ったところだな、——殺人鬼さんよ。」
佳夢はその言葉に反応し、
目を大きく開いた。
「なんでそれを...。」
「どうでもいいだろう。気にしないのがお約束じゃねえか?」
氏神は余裕を取り戻してきたようで、
ナイフを指でいじりながら話し始めた。
「まぁ、風の噂ってとこだ。決して表立っては話されない、風の噂さ。」
「...。」
氏神は片腕をおろし、ナイフの刃先をもう一度こちらに向けた。

しかし、今度は自ら跳ぶのではなく、
大きく振りかぶって、ナイフを投げた。
ナイフは佳夢の脇腹をかすり、佳夢は咄嗟に脇腹を抑えた。
しかし、何とか痛みをこらえ、立ち続ける。
「これくらいじゃ...、っ!」
三秒も持たずして、佳夢はその場に倒れる。
「すまんな、兄ちゃん。そのナイフには毒を塗っておいた。
いやしかし、まさか当たるとは思っていなかったぜ。」
顔だけを上げ、氏神を見ると、
氏神は相変わらずの仏頂面ではなく余裕の笑みで立っていた。
それを見て、佳夢も笑う。
「お前、それじゃ」
消え入りそうな声で佳夢は言う。
「お約束通り、やられるパターンじゃねえか...。」

次の瞬間。
氏神の頭に、何かが降りてきた。
それは氏神を踏み台にし、
佳夢のもとへ駆けつけてきた。
少しして佳夢の腕に注射針が刺さる。
「...。」
注射針を抜くと、そこに立っていた少女は、氏神の方を向く。
「...私の...家族に」
殺気を放ったその顔は、
まるで恵人の部屋で佳夢と対峙した時のようだった。
「...痛い思いをさせないで...。」

鎌奈九六
十五歳。女。義妹。学生。射手座のA型。
最近、両親を亡くした。その他、詳しい事は不明。
一族きっての暗殺者。