複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.148 )
日時: 2012/09/18 23:23
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
参照: またまた投稿。もう誰にも止められない。

「う...、あ、九六?」
「...。」
九六は黙って、佳夢を見る。
「九六ちゃんだけではないですよ。」
そう言って姿を現したのは、剛憲であった。
「剛憲さん...。」
「全く、鎌奈家に手を出せば、死を覚悟するという事を...。」
剛憲は声色を変えて叫んだ。
「分からんのか、若造がぁ!!」
それに気圧されたように、氏神は後ずさりする。
だが、氏神はそれだけでは理解できないらしく、
もう一本のナイフを構えて走り出す。
「死ね、老いぼれがぁ!」
九六は剛憲の前に庇うように立ちふさがるも、
剛憲はそれを右手で制し、九六を後ろにやる。
その時には、氏神はすぐそこに来ていた。

しかし、次の瞬間に飛んでいたのは氏神の方であった。
三秒ほど宙に舞い、地面に音をたてて落ちた。
氏神も、九六すらもその現象を理解できず、
呆然としていた。
剛憲は氏神に向かい、鬼のような気迫を放つ。
「お前のような素人など、相手にもならん。」
一方で佳夢は、体が動くのに気付いた。
どうやら、九六が打ったのは解毒剤らしい。
それが、今になって効いてきたようで、
佳夢は両手で立ち上がる。
そして、氏神の元へ向かい、氏神を見下すように見る。
何も言わず、携帯を取出し電話を掛けた。
「もしもし、紅介さんですか?放火犯見つけました。」

やがて警察が到着し、氏神を連れて行った。
どうやら、一件落着のようだったが、
しかし、疑問は残っていた。
「なぁ、九六。」
「何...?」
「お前さ、さっき『私の家族』って言ってなかった?」
「言った。」
「それって一体...。」
言いかけた時、前から紅介がやってきた。
「おう、佳坊!お手柄だな!」
「そんなんじゃ、ないですよ。」
「そうか?あ、そうだ。はい、これ。」
「?」
紅介が渡してきたのは一枚の紙だった。
「氏神からだ。このままでは悔しいからな、とか言ってたが...。」
「?」
一体何なんだろうと思い、紙を裏返すと、日時と場所が示されているのみだった。

『四月五日。午後三時。
駅前のカフェ。』

もしかたら、その日にここへ行け、という事かもしれない。
丁度その日は、学校も午前で終わりだ。
行くことにはしたが、何があるかは分からず仕舞いであった。
紙をしまって、再び九六の方を向くと、すでにいなくなっていた。
「逃げ足の速い奴め...。」

家に帰ると、真っ先に迎えに来たのは真夢ではなく愛子だった。
「よ、佳夢君!大丈夫!?」
「お、おう...。まぁ、毒はもう解毒したし。」
「そう...?よかった...。」
愛子は安堵したように、ため息をつく。
なんだか、帆花に似ている。
しかし、心配していてくれたのだろうか。
「さっき、菜夢ちゃんがすごい真っ青になってたよ...。」
「は?え、どういう事?」
「あ、えっと、佳夢君が放火犯と戦ってるって聞いて、
それで、すごく怯えた表情をしてたよ、って話。」
菜夢はなんだかんだでナイーブなところがある。
もしかしたら、一番面倒ではなのではないかと佳夢は思った。
「行ってあげてよ、佳夢君。」
「...あぁ。」
その後、生きた佳夢を見て真夢が大変喜ぶのだが、それはまた別の話。

「あー、だるい...。」
ベットに寝転がりながら、佳夢は唸る。
火だるまに毒と、降りかかる災難に流石に疲れてくる。
「もう寝よっかな...。」
傷口をそっと触って、少し痛みを感じる。
「...ん、生きてる。」
そう呟いて、佳夢は目を閉じた。
目が醒めた時には、愛子がいなくなっていることを忘れて。