複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.159 )
- 日時: 2012/09/25 23:38
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
- 参照: 第二章は鎌奈兄弟編、かも?
時は過ぎて。
五月三日。
佳夢が刻夢と思われる人物を見かけてから、
一ヶ月ほど経っていた。
しかし、その後は姿を見ることもなく、
淡々とした日々が続いて、現在に至る。
春の暖かい日の光を浴びながら、
鎌奈裏夢は縁側でうたた寝をしていた。
何度か起きたものの、やはり眠くなる。
春眠暁を覚えず、というのは昼にも適応されるのかと、
思ったりもした。
「——痛!」
ふいに、頭に強い衝撃が走る。
後ろに倒れて頭をぶつけたのかと思ったが、
どうやら違うようで、上から視線を感じる。
「何を寝てるの、裏夢兄さん。」
振り返ると、実の妹である菜夢だった。
「勉強しなさいよ、勉強。受験生でしょ?」
「ん、んん。あれ、そうだっけ?」
「そうよ。」
寝ぼけていたのか本気で忘れていたのか、
裏夢の間の抜けたボヤキに菜夢は呆れる。
「大体、裏夢兄さんとか佳夢兄さんは、気合がなさすぎよ。」
「俺は...そこそこ頑張ったりするよ。」
「そこそこ、ね。それで高校に受かる学力に達するかは不明だけど。」
「時々、すっげー傷つく事言うよね。なーちゃん。」
裏夢は項垂れながら暗い事を言う。
「それマジで自信失くすからやめてくんない?」
「嫌よ。私は裏夢兄さんの事を思って言ってるの。」
「...とんだブラコンだこと。」
その言葉が効いたのか、菜夢は顔を真っ赤にし、
裏夢の背中を蹴りあげた。
裏夢は顔面から滑り込むように中庭へ落とされる。
「な、何言ってんの!?別にそんなんじゃないから!」
「デレ要素が強くなってないか?」
体を起こし、精一杯伸びをすると、裏夢は自室へと向かった。
「あら、勉強する気になった?」
「ちょっとはね。妹のためにも。」
首を気怠そうに回しながら、菜夢と並んで歩く。
横にいる菜夢を見て、ふと気づく。
「菜夢ちゃん、背、伸びた?」
「え、えぇ?まぁ。成長期だし。」
「ふーん...。なんか、複雑だなぁ。」
「何が?」
言ってはみたもの、聞かれても少しばかり困る。
ちょっと考えて、頬を人差し指で掻きながら言う。
「俺にとっては、妹ってなーちゃんしかいないからさ、
その妹が成長したってのは、嬉しいような、悲しいような。」
「父親か。」
菜夢がぼそりと呟く。
そう言われても仕方ないような台詞ではあったが。
「...佳兄は、こういう気持ちを何回も繰り返したんだろうな...。」
「まぁ、あの間抜けな兄ならね。でも、それ以上に...。」
菜夢はそこで言葉を切って、ためらってから続きを言った。
「刻夢兄さんの方が、そういう気持ちを繰り返したんじゃないかしら?」
菜夢が刻夢の事を口にするとは意外であった。
「...そうだね。」
実際、裏夢にとっては刻夢に関しての記憶がないに等しいのだが、
どんな性格だったかとかは、母から聞いていた。
なにせ、大らかで、頭がよく、男女問わず人気だったとか。
一部脚色もあっただろうが、母はよく裏夢達にそう話していた。
そして、「あんた達もそうなりなよ」と決まって口にするのだった。
それほど、よくできた息子だったのだろう。
勿論、母は裏夢達にも変わらぬ愛情を注いだが、
長男坊である刻夢は、一番に愛情を受けていた。
時に優しくしたり、時に叱ったり。
そんな感じの、なんら変わらぬ愛情を。