複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.161 )
- 日時: 2012/09/30 23:07
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
- 参照: ただの本編だ!
ふと、菜夢が足を止め、
それにつられて裏夢も足を止める。
菜夢の視線の先にいた人物は、フードを深くかぶり、
その奥の瞳に菜夢と裏夢を映していた。
ただ、菜夢と裏夢は驚くこともなく、その人物に近づく。
「おう、九六。」
「こんにちは九六姉さん。」
九六は声に出さずともゆっくり頷いて応える。
九六は先月この家に来た、鎌奈家の養子である。
九六の両親は事故死して、
その両親と親友であった裏夢達の母が引き取ったという経緯である。
高校一年生で、基本的に無口である。
しかし、この家に来て一カ月してなお、
遠慮しているようである。
ただ、佳夢だけにはどうにも懐いているようで、
よく話しているのを見かけるのだった。
「九六姉さん、それ、暑くないの?」
菜夢が九六のフードを指しながら言う。
因みに、菜夢が九六を姉さん付で呼ぶのは、
九六が来た翌日からである。
順応早いなオイ、と佳夢からツッコまれていた。
菜夢に聞かれて、九六は首を横に振る。
「そう。でも、見ててちょっと暑苦しいのよね。」
「ストレートだな!」
いつなんどきも、歯に衣着せぬ物言いをする菜夢には、
冷や汗をかかされることが多かった。
しかし、九六は傷ついた様子もなく、
困ったように俯く。
「あ、いや。別に取らなくてもいいぞ。」
裏夢がそうフォローするも、
九六はフードを脱いだ。
しかし、肝心の顔も包帯で覆われており、
それはそれで、暑苦しかった。
「...まぁ、いいわ。その先はまた今度。」
「やるんだ...。」
九六はほっとしたようなしぐさを見せ、
裏夢と菜夢の間を抜けて去って行った。
「なんか、不思議な感じだよな。」
「そうね。慣れないわね。」
「嘘付け。」
裏夢は順応の早い菜夢と違って、
未だ九六が自分の家族という事実になじめずにいた。
仲良くはしているが、
呼び方も「九六」とよそよそしく、
どうにかしたいと、本人も思っている。
その辺は、九六と同じなのかもしれない。
「ま、九六姉さんはいいとして、勉強しに行くんでしょ?」
「うっ...。嫌なこと思い出させやがって。」
「私にとっては苦ではないけど。」
そんなことを言いながら、菜夢は自分の部屋の前で立ち止まる。
「私も勉強するわ。じゃ、頑張ってね。」
菜夢はそそくさと部屋の中へ入って行く。
一人残された裏夢は、自室をめざし再び歩き始める。
そして、一人でこのデカい家を歩くのは、
どれだけ面白みがないか、痛感したのであった。
ただ、そんなつまらなさもすぐ解消される。
今度は後ろから、何者かが駆けてくる音がした。
振り向こうとすると、肩に手が置かれる。
「裏夢、みーつけっ!」
その瞬間。
勉強の時間が大幅に削がれるのが、確定した。
振り向けば、案の定真夢であった。
「なんですか...。真夢サン...。」
「うっわー、何その呼び方。引く。」
「なんで?」
真夢は不服そうに頬を膨らませる。
暫く話していなかったが、どうやら成長はしてないらしい。
変わった点といえば、眼鏡を掛け始めたことだけだ。
元々目が悪かったのだが、
真夢はなぜか眼鏡を掛けなかった。
しかし、佳夢の必死の説得により、
この度、眼鏡を掛けることにしたのだ。
因みに、佳夢からのおさがりである。
「で、何の用で?」
「決まってるでしょ!」
ずいぶん強気な口調で、真夢はない胸を張る。
「遊ぶわよ!」
「でしょうね...。」
ひとつ訂正。
勉強の時間は削がれたのではなかった。
なくなったという表現の方が正しかった。