複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.176 )
日時: 2012/10/23 22:00
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)

窓の外に立つ佳夢の後ろで、
真夢はその光景を、
訳が分からないような表情で見ていた。
しかし、兄を助けようとする本能が働き、
思わず身を乗り出す。
それを抑えたのは樹であった。
「真夢さん、今は外に出ない方が...。」
「う、分かってるけど、お兄ちゃんが。」
真夢は今にも泣きだしそうだった。
「駄目だ。今は、まだ」
そう言いかけたとき、
樹はふと気が付いた。
真夢の後ろにいた、九六がいない。

「真夢さん、九六はどこに——?」
「え?えぇ?」
聞かれてから、真夢も後ろを振り返る。
真夢も九六がいないことに気付いて、
慌てふためく。
「くっ、どこへ行った?」
樹は店内を見回すが、
何処にも九六の姿はない。

後ろで真夢の泣きそうな声が聞こえ、
佳夢は振り向きそうになる。
しかし、いつ殺されてもおかしくない状況で、
そんなこと迂闊には出来ない。
下唇を噛み締めて、
じっと耐える。
しばらくして、元喜は目を瞑って、
機関銃を降ろしたのだった。

「鎌奈佳夢。俺はお前を殺しに来たのではない。」
「...じゃあ、何をしに?」
「ついて来てほしい。」
そう言って、元喜は反対方向を向いて歩き出した。
本来ならそこで襲い掛かる事も出来たが、
今そうしても意味はない。
佳夢は黙って後を追いかける。

辿り着いたのは、大きな洋館。
何時間歩いたのか、すでに夜になっていた。
途中で逃げ出そうとも思ったが、
何をされるかわからないのでやめておいた。
洋館はすでに人が住んでいないらしく、
明かりすらついていなくて、
薄気味悪かった。
「で、ここに一体何があるんですか。」
「俺はお前を殺しに来たのではない。」
問いに答えることもなく、
数時間前に佳夢に行った台詞を復唱する。
「俺はここにお前を連れてきただけ。」
元喜は横目で佳夢を睨む。
「さらに言えば、殺すのは俺じゃない。」

その瞬間。
佳夢は後ろに気配を感じて振り返る。
同時に回し蹴りを放ったが、
かすりもしなかった。
ただ、そこに誰かがいたのは確かであった。
後ずさりしながら、佳夢は周囲を見回す。
しかし、暗いのでよく見えず、
窓から差し込む月明かりだけが頼りであった。
それだけでも十分と思えようが、
それでも、不利な状況にあるのは違いない。

「ははははははははっ!」
何処からともなく、笑い声が聞こえてきた。
「お前が鎌奈佳夢かぁ。
顔はよく見えねーが、うん、なかなかできそうだな。」
声のする方向を見ると、
大きな階段の上にかすかに人影が見えた。
「一応名乗っておくよ!俺は天都長司!零番目の——」
その間にも、佳夢は階段を駆け上がって、
恐らくいるであろう敵に向かってゆく。
長司の目の前まで来て、
佳夢は拳を振りかざす。
「〝愚者〟だ。」

佳夢の鳩尾に、見事なストレートが入る。
佳夢は素早さにはそこそこの自信のがあり、
それはほかでも認められているのだが、
長司はそれを上回る速さで動いていた。
佳夢は少しの間中に浮かび、
そして、階段を転がり落ちる。
「いいねぇ。」
満足したように長司は笑った。