複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.177 )
- 日時: 2012/10/23 22:42
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
- 参照: 本日三回目。マジかよ。
長司は落ちてく佳夢を見届け、
階段をゆっくり降り始めた。
「まったく、元喜さんよぉ。街中でマシンガンはやりすぎだよ。」
長司はスマートフォンの画面を見つめる。
そこには、機関銃を発砲する元喜が映されていた。
この騒ぎを撮っていた一般人が、
動画サイトに投稿した映像であった。
嘘だの本当だの、コメント欄では討論が繰り返されている。
どうせ、明日には天都家の権力を駆使して
もみ消されてしまうのだろうが。
「でも、怪我人とか出たらどうすんだ、って、あれ?」
階段の下を見下ろすと、すでに元喜はいなかった。
一体どこへ消えたのか。
「ま、いいや。」
どうせ帰ったのだろう、と結論付けて、
階段を下り続ける。
それにしても、階段は長かった。
いっそここから飛び降りてもいいのだが、
着地に失敗したら痛いのでやめておく。
「しかし、誰でもいいから連れてこいとは言ったけど、
まさか、鎌奈佳夢を連れてくるとはなぁ。」
それは、長司にとっても予想外であった。
本当に予想していなかった。
「でも、案外あっさり倒しちゃったな。
あ、もしかしてもう死んだ?」
目を凝らして階段の下を見るが、
よく見えない。
そこに鎌奈佳夢が転がってるかすらも疑わしい。
「でも、あの刻夢の弟だもんなぁ。その上、元殺人鬼。」
カッコイイねぇ、とおどけた調子で長司は言う。
「顔も一瞬しか見えなかったが、美形ではあったな。羨ましい。」
本当は羨ましさのかけらもないのだが。
寧ろ、自分が上だとも思っていた。
そもそも、長司は自分でも美形だと自負している。
「あーあ。抉りたかったな、鎌奈佳夢の臓器。肝臓、腎臓、肺...。」
物騒な単語をいくつか並べながら足を進め、
やっとのことで、一番下までついた。
そこで、長司は気づいた。
「あらら?」
そこに鎌奈佳夢はいなかった。
鎌奈佳夢の落下地点からは血の跡がまっすぐのびていて、
その先の窓が開いていた。
「あ...。やっちゃったか。」
別段後悔した様子もなく、
長司は呟いた。
「兄さん、しっかりしてください。」
佳夢を支えながら、九六は必死に呼びかけた。
「奥で車が待ってますから...。」
一方の佳夢は虫の息であった。
普段は弱みを見せない九六も、
泣きそうになりながら森の中を歩いていた。
その時、奥から懐中電灯の光が見えた。
「九六ちゃん!」
それは、急きょ駆け付けた恵人であった。
九六はそれを見てほっとした表情を見せた。
森の中で緊急の手当てをし、
それから佳夢を車に乗せた。
因みに運転するのは彩奇の妹、帆花である。
「よ、佳夢君!」
運転席から心配そうに顔をのぞかせる。
「帆花さん、出発して!」
「う、うん。」
そう言われて帆花はアクセルを踏む。
「恵人さん...。」
後部座席から、助手席の恵人に向かって九六は話しかける。
「兄さんは、助かりますか?」
「うん。絶対に助ける。僕がね。」
やがて、恵人の家に着き、
帆花と九六は家へと戻った。
それを見送って、恵人は家の中に入る。
「...天都家、か。」
車の中で九六から聞いた一連の騒動の詳細を思い出す。
研究室に戻って、ベッドの上で寝転がる佳夢を見て、
五年前の事を思い出した。
刻夢が死んだ年の事を。