複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.184 )
日時: 2012/10/29 22:51
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)

さかのぼる事、五年前。
鎌奈刻夢が殺された年。
目も当てられない位、無残に。
鎌奈刻夢は死んでいた。
当時、その死体の解剖に参加していたのが、恵人であった。
死体、といっても、四肢はほとんど残っておらず、
「ひどすぎる」と、同僚がつぶやいたのを恵人は覚えていた。
犯人は見つからず、事件は迷宮入りとなった。

それから一年して。
大手企業の社員が次々と殺されていく事件が起こった。
間違いなく、同一犯であった。
それを見た恵人は、
自ら犯人を捕まえるべく、独自に行動していた。
ありとあらゆる手を使い。
そして、行き着いた先が天都長司の名前であった。

その後、恵人は長司と対峙することとなるのだが、
その圧倒的な戦力の差を埋められる筈も無く、
彼は復讐に失敗した。
それからも、殺人は続いて、
その度に恵人は無力感に覆われるのであった。

「そうですか。」
それを聞いた佳夢の態度は、
依然として冷静であった。
ゆっくりと寝返りを打ち、恵人から顔をそむける。
「なら、よかった。」
「え?なにが?」
「それだったら、手加減しないで済む。」
恵人はいきなり椅子から立ち上がった。
勢いで椅子が倒れ、
その音に驚いて佳夢は顔だけを恵人に向ける。
「頼むから、彼を殺すなんて考えないでくれよ。」
「...。」
そんなことわかっている。
喉まで出かかったそのセリフを押え、
再び恵人から顔をそむける。
「僕の、二の舞だけは踏まないでくれ。」

一方。鎌奈家では。
「そうか、若長は無事か。」
「へぇ。佳夢はまた怪我したんか。」
「...兄さんも懲りないわね。」
「えっ!?本当に!?大丈夫なの、佳夢君...。」
どれが誰の台詞かはご想像にまかせるとして、
誰が離したのかは知らないが、
話題は佳夢の噂でもちきりであった。
その噂は、はるか遠く、
九州まで届いていた。

「へぇ、そう...。」
『で、またお兄ちゃん死にかけてるの!』
「ふぅん。」
電話越しにこぼれてくる愚痴に、適当に返事しながら、
漫画を読み進める。
台所から同居人が「今日カレーでよか?」と聞いてくるので、
一旦受話器を離して、
「全然OK。」
と返事をする。
本当は昨日もカレーだったのであまり食べたくないが、
文句を言うと面倒なので、言わない。
再び受話器を耳に当てる。
「で?俺はなにをすりゃいいの?」
『いや、別に?あ、でも、たまには涼太さんも帰ってきたら?』
「そうだな。真夢ちゃんが帰ってきてほしいっていうなら——」
そこまで言ったところで、急に電話が切られた。
「つれないなぁ。」
返事のない受話器の向こうに向かって、涼太はそう呟く。

水音寺涼太
十八歳。男。はとこ。学生。魚座のB型。
秒速、10.3m。偏差値、76。
一族きっての俊足ライダー。