複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.185 )
- 日時: 2012/10/31 23:25
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
それから何週間か経って、
既に六月が近づいていた。
学校帰り、すっかり日が暮れた夜道を、
佳夢はゆっくりと歩いていた。
最近、嘘のような平和な日が続き、
なんだか少し落ち着かない。
そう思っている自分と、
常に以上だった日々にあきれてくる。
不意に、背中を叩かれる。
振り返ると愛子がいた。
「お、押崖。あれ?友達は?」
いつもなら愛子はクラスの女子と一緒に帰っているはずだった。
「先帰っちゃって。一緒に帰ろ?」
「いいけど...。」
流石に女子高生として、
男子と帰るのは遠慮したほうがいいのではと思う。
本人が気にしなくとも、いつかうわさを流されるであろう。
そんなことを思いながら、再び歩き始めた。
その後、世界五分前仮説などについて語り合っていると、
ふいに愛子が話題を変えてきた。
「そういえば、佳夢君。あの、刻夢さん、だっけ。」
そう言われて、思い出す。
刻夢が実は生きていたという事実を。
そんなマンガみたいな展開があっていいのかと、
今では冷静に分析できるが、
しかし、再び刻夢を前にしたら、
落ち着かない状態になるに違いない。
「あの人は、結局どうなったの?」
「さあな...。また会う機会があったら、会いたいが...。」
「まぁ、そうだよね。」
愛子も心の中では無理だと分かっていても、
死んだ父たちに会いたかった。
だから、佳夢の気持ちは理解できた。
「でも、俺が見たのは遠くから見た姿だからなぁ。」
佳夢は阿美香との対話を思い出す。
阿美香は、あれは刻夢ではないという。
果たして、佳夢が見た人物と阿美香が見た人物が同じなのか、
それは定かではないが、
そうだった場合、やはり佳夢より刻夢を知ってるのは阿美香だし、
阿美香が正しいのだろう。
難しい所であった。
「それに、今いたとしたら二十三歳だし、見間違いの可能性も——。」
そこまで言ったとき、愛子の足が止まった。
前を見ると、電柱のたもとに、人影があった。
その人影がこちらに近づいてくるにつれ、
だんだんと姿があらわになってくる。
「よ、佳夢君。」
愛子は佳夢の腕にしがみつく。
その体はとても震えていた。
同時に、佳夢も少し震えていた。
「なんだ、女連れか?佳夢。」
その声は、昔に聞いたことがある懐かしい声。
——これは、もしかして、もしかして、もしかして、もしかして。
佳夢は完全に混乱していた。
あの時と同じく。
やがてその人物は月の光に照らされ、
くっきりと姿を現す。
「見間違いじゃないさ。佳夢。」
その人物が姿を現した瞬間。
佳夢の気持ちは一気に冷めた。
阿美香の言葉が脳裏をよぎる。
『ええ。でも、あれは刻夢じゃないわ。』
『どうせ顔しか見てないでしょ?』
『会えばわかるわ。』
その通りであった。
「お前、誰だ——?」