複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.186 )
- 日時: 2012/11/03 22:43
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
鎌奈刻夢——らしき人物は、
目を大きく開き、固まっていた。
「...いや、何を言ってるんだよ」
「だから、誰だって聞いてるんだよ。」
目の前の男は状況が呑み込めないらしく、
なにやら戸惑っている。
その表情は刻夢に似ていた。
しかし、刻夢ではないと、佳夢は確信していた。
「えっと...。俺は、お前の兄の」
「違う。」
男が何か言い終わる前に、それを遮って言った。
「お前は俺の兄なんかじゃない。」
隣ではこちらも状況の呑み込めていない愛子が、
両者の顔を交互に見つめていた。
「...あんたが誰なのかは知らないけど、それは断言できるぜ。」
「な、なんか、俺のこと忘れてない?確かに、五年越しではあるけど——。」
「しつけえよ。」
再び台詞を遮られ、男は沈黙する。
数秒、いや、数分かもしれないが、
沈黙が続いた。
暫くして、男は口を開いた。
「わかったよ、佳夢。」
まんま刻夢の口調をまねて、
男は後ずさって行く。
「俺の事を思い出したら、また会いに来てくれよ。」
誰が行くものか、と佳夢は心の中で吐き捨てた。
「それと。これは報告。ていうか、警告。」
一旦足を止めて、男は告げた。
「真夢と菜夢。あいつら狙われてるぜ。」
男が何処かへ消えた後、
重い空気が漂っていた。
「よ、佳夢君。あの人、お兄さんじゃないの?」
「違う。」
間髪入れずに、佳夢は答える。
そこまで否定されると、
かっこよく登場した刻夢——ではない男が
みじめにも思えてきた。
「なんで違うと思うの?」
最も、刻夢の姿など見たことがない愛子が言うのは変だが、
先程まであんなに希望を持ってたのに、
どうしてここまで否定できるのか気になった。
「だから、違うんだよ。」
しかし、佳夢の答えはあいまいだった。
「えーっと、あいつは刻夢になりきってた。完璧に。でも、わかるんだ。」
「...。」
「兄弟、だから。」
それは、無茶苦茶で、
それでもなんだか正しいように思えた。
そして、新たな問題。
一難去ってまた一難とは、よく言ったものだ。
佳夢は、愛子と話している間にも、携帯を取り出していた。
「押崖は真夢に連絡取ってくれ。」
「りょ、了解。」
言われた通り、携帯で真夢に電話を掛ける。
しかし、繋がらない。
「佳夢君、駄目だったよ。」
「こっちもだ。全然つながらない。」
「これって...、結構ヤバいんじゃない?」
「そうだな。しかし、俺以外がこういう目に遭うって、珍しいな。」
独り言のように呟きながら、
佳夢は携帯を操作していた。
驚くべき速さでメールを打ち、
送信ボタンを押す。
横で見ていた愛子は、思わず見とれてしまう。
携帯を閉じ、ポケットにしまうと、
佳夢は愛子の方を向いた。
「押崖、お前は先に家帰ってろ。」
「え?でも...。」
「いいから。これは、俺たちで解決する。ほら、行け。」
そう言って、佳夢は愛子の背中を押す。
夜道に放り出された愛子は、
しぶしぶ歩き出した。
振り返ってみると、そこに佳夢はいなかった。