複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.191 )
日時: 2012/11/05 23:58
名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)

「はぁ、はぁ、はぁ...。」
およそ家からかなり離れたところまでは走っただろう。
もう、真夢の体は悲鳴を上げていた。
普段運動していないツケがまわってきた。
何があったかといえば、言葉にするとシュールすぎて、
語るのは難しかった。
「はぁ、はぁ、はぁ...。」
小さなトンネルの壁にもたれ、
肩で息をしていた。
周囲に目をやる。
どうやら、追ってくる気配はなかった。
しかし、こちらに来ていないとなれば、
菜夢のところへ行ったのかもしれない。
「...。」
ゆっくり壁から離れて、
菜夢のところへ向かおうと、脚を動かす。
一歩、二歩、歩いたところで、後ろから声がした。

「どこへ行くんだい、お嬢ちゃん。」
ハッとして振り返ると、
天都家の一員、義彦が立っていた。
「いきなりの登場ですまねえな。ま、許してくれよ。」
義彦はへらへらと笑いながら、
こちらヘ近づいてくる。
真夢は後ろへ下がろうとするが、
想うように足が動かない。
「さて、お嬢ちゃん。覚悟はできたかな。」
「...?」
「おっと、いきなりの問いかけですまねえ。
えっと、覚悟っつーのは、死、の覚悟だ。」

真夢はそれを聞いて、心臓が止まりそうな気分だった。
そんなの、予想していなかった。
「どうした、さっきより震えてるぜ?もしかして、こういうの想定外?」
気付けば、義彦はすぐ近くまで来ていた。
手を伸ばしたら届きそうな気分だ。
トンネルのライトが不気味に義彦を照らし、余計に怖い。
「おいおい、人はいつ死ぬかわかんねーってのによ...。
これからはそう言い聞かせて生きるんだな。」
義彦は言いながら、手を振り上げた。
「ま、死ぬんだけどね。」

突如として聞こえてきたバイクのエンジン音が、
トンネル内に響き渡る。
その音に両者ともハッとする。
真夢の後ろから、二人の間に入り込むように、
大型バイクが、割り込んできた。
「おらぁ!」
長い脚がそこからのび、義彦の鳩尾にヒットした。
義彦は勢いよく後ろに飛び、
地面にたたきつけられた。
「あ、あ、あぁ...。」
「よう、真夢ちゃん。久しぶり。」
「りょ、涼太さん!?」
涼太は右目で爽やかにウインクをした。

「いってえな...。」
地面に転がった義彦が、
仰向けになったまま呟いた。
「おい、おっさん。」
呼ばれて、義彦は顔だけ上げる。
「次に鎌奈家に、特に女の子に手を出したら、許さねえからな。」
「...あいよ。」
真夢をバイクの後ろに乗せて、
涼太はその場を風の様に去って行った。