複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.192 )
- 日時: 2012/11/11 00:48
- 名前: 純金リップ (ID: Q.36Ndzw)
一体自分は何故追われているのか。
走ってる間その事だけが頭を埋め尽くしていた。
普段から運動をしない菜夢にとって、
走るだけでも一苦労であった。
どれだけ走っても振り切れることはないのだろうけど、
それは菜夢にも分かっていた。
辿り着いたのは見知らぬ橋で、
その上に膝に手を突いて立ち止まる。
先述したように普段から運動をしていないので、
彼女の体力などたかが知れていた。
必死で呼吸を整えていると、
後ろから声がした。
「疲れましたか。」
天都家の一員である赤穂は、
ハイヒールを履いてるにも関わらず、
菜夢に易々と追いついていた。
下唇を噛み締めて、菜夢は再び走り出す。
「無駄なことを...。」
「はぁ...、はぁ...。」
息を切らしながら、走り続ける。
時折後ろを振り返るも、憑いてくる気配はない。
ただ、立ち止まるとまた追いつかれる気がして、
速度を落としながらも走り続ける。
「はぁ...、はぁ...。っつ!?」
しかし、目の前に突如として現れた電信柱にぶつかってしまう。
「きゃっ!」
悲鳴を上げ、地面に尻もちを突く。
ふらつきながらも立ち上がると、
後ろから足音が聞こえてくる。
はっとして、後ろから伸ばされた手を振り払う。
振り返ると同時に、非力な拳をぶつける。
しかし、それは容易に受け止められ、
そちら側に引き寄せられる。
「あっ...。」
前のめりに倒れる菜夢を、優しく受け止める。
顔を挙げてみると、
それは裏夢であった。
「大丈夫か?なーちゃん。」
「り、裏夢兄さん。」
裏夢の顔を見たことで、急に安心し、
その場に崩れ落ちそうになる。
「佳兄からSOSのメール貰って来たんだけど...。」
裏夢は周りを見回してみる。
誰かが追ってくる気配はなかった。
取りあえずその場に菜夢を座らせ、
缶のジュースを自販機で買ってきて渡した。
少しは落ち着いたようで、ジュースを飲みながらも、
「お茶がよかった」と、毒づく姿を見て、裏夢は安堵する。
「ま、無事でよかったよ。なーちゃん。」
「...裏夢兄さんが来てくれてよかった。本当にありがとう。」
「ん、やけに素直だな。」
裏夢はにやにやしながら菜夢の顔を覗き込む。
菜夢は照れ臭そうに笑っていた。
「そういえば、裏夢兄さん。」
「なんだ?」
「ここに来る途中で、ハイヒールで走る人を見なかった?」
「は?見てないよ。」
菜夢はなにかおかしいと思い、
不安がよみがえってくる。
「それより、九六姉が心配だな。」
携帯の画面を開きながら裏夢は呟く。
佳夢からSOSのメールをもらったのが裏夢だけでなく、
九六も貰っていたのを確認する。
「メールでもしとくか。」
「裏夢...。」
そのタイミングを見計らったかのように、
後ろから九六の声がした。
振り返ってみると、九六がいたのはいいが、
全身ボロボロの状態であった。
ふらついた足取りで、こちらに歩いてくる。
「九六姉さん!」
菜夢と裏夢は、すぐさまそちらに駆け寄る。
倒れそうな九六を支える裏夢。
「九六姉!」
「裏夢兄さん、前!」
菜夢に言われ前を向くと、
高身長のクールな美女が立っていて、
それが菜夢を追っていた天都赤穂だと勘付くのは余裕だった。
赤穂は赤いハイヒールをカツンカツンと鳴らしながら、
こちらに近づいて来る。
「なーちゃん、九六姉お願い。」
二人を庇うようにして裏夢は前に乗り出る。
「鎌奈裏夢、ね。」
「そうだよ、お相手よろしく。綺麗なおねーさん。」