複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.209 )
- 日時: 2012/11/28 23:11
- 名前: 純金リップ (ID: qUfyS13Y)
人通りの少ない路地裏。
さっきからちょいちょい腕時計を見ていて、
佳夢は落ち着かない様子であった。
そんな佳夢を、後ろで控えている真夢と菜夢が見ていた。
「...。」
「...。」
「...。」
三人の誰も、さっきから言葉を発しない。
「...ねぇ。」
不意に、真夢が喋り始める。
「空気重くない?」
「...いいじゃんか。」
「いいのかなぁ?」
「いいんだよ。」
「いいんだねぇ。」
そんなことを言ったきり、
真夢ももう喋らなくなった。
「...なんだよ、今の流れ。」
佳夢が呟くと同時に、足音が聞こえてくる。
三人は一斉にその方向を向き、息を呑む。
「よ、佳夢。真夢。菜夢。俺だよ、刻夢だ。」
「だから、俺の兄の名前を名乗るな——。」
佳夢は前方の男を睨みつける。
「おれおれ詐欺は余所でやれ。」
「ったく、ひどいなぁ。実の兄に向かって」
「しつこいわね、あなたも。」
菜夢が冷たく言い放つ。
「私達でも、いえ、私達ならわかる。」
「あなた、刻夢お兄ちゃんじゃないよね。」
真夢のあどけない笑みで放たれる言葉も、
なかなか辛辣だ。
「...。」
男は言葉も出ない様子であった。
それほど上手く騙しているつもりだったのだろうか。
だとしたらそれは、自意識過剰だ。
そして佳夢は、この男がここまで言われてどう出るか、
このまま嘘をつき続けるのか、
それとも、正体を明かすか、
それが気になっていた。
「...なんで認めない。」
「?」
「お前らは、刻夢に戻ってきてほしくないのか?」
よく見ると、男はとても悔しそうな顔をしている。
外見は丸っきり刻夢なので、
見てて少し心が痛む。
「あいつが殺されて、お前らは戻ってきてほしいと思わないのか!?
僕は思う!あいつは唯一の僕の友達だった。僕を認めてくれた!
僕がどんな奴であろうと、あいつは僕を許してくれた!」
段々と男の口調が強くなっていく。
どうやら、男は刻夢の知り合いのようだ。
佳夢はそれをあらかじめ知っていたが、
菜夢と真夢は、はじめは何を言ってるのか分からなかった。
「なのに!なんであいつは死んだんだ!?
僕たちを置いて、死んだ!殺された!天都長司に!」
そこで長司の名を口にし、やはり、事件の内容を知っているのだと、
佳夢は勘付く。
ただ、男も天都家の一員なので、知っていてもおかしくはないが。
「僕は、あいつの続きをするんだ!
僕が、あいつの人生の続きを——」
「馬鹿じゃないの!」
そこで聞こえた怒号は、間違いなく真夢だった。
「刻夢お兄ちゃんは死んだの!
死んだ人の人生を続けるなんて、無理よ!」
真夢の顔は涙ぐんでおり、普段は見られない姿だった。