複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.210 )
日時: 2012/12/10 23:29
名前: 純金リップ (ID: qUfyS13Y)

かつての親友の妹に怒鳴られ、
鎌奈刻夢——否、天都紘一は唖然としていた。
ここまで自分を怒ったのは、
あの鎌奈刻夢以来だ。

七年前。
天都紘一は孤独だった。
高校生活に上手くなじめず、
友達もいなかった。

そんな彼に手を差し伸べてくれたのが、
鎌奈刻夢だった。

彼はクラスの中でも人気者で、
男女平等に優しく、
スポーツを除いて、ほとんどにおいて優れていた。

だから、最初刻夢に話しかけられたときは、
紘一は我が耳を疑ったものだ。
クラスの人気者に、
声を掛けられるなんて——。

そうして彼は、紘一の唯一無二の親友となった。
その後、自然に紘一にも友達は出来たが、
紘一自身がそれを友達だと認めなかった。
どうせ彼らは、
刻夢に引き寄せられてるだけなのだから。

「紘一さぁ、将来何したい?」
高校三年の夏。
刻夢は突然そんなことを聞いてきた。
「僕?僕は、特に何も...。」
「そっかぁ...。そんならさ。」

刻夢は紘一を向き直って、彼に頭を下げた。
「頼む、俺が駄目になったら、弟たちを頼む。」
「はぁ?何言ってるのさ?」
「だから、言った通りだよ。」
「駄目になったら、ってなんだよ。」

一瞬ためらって、刻夢は言った。
「死んだら、ってことっしょ。」

その何か月か後に、
鎌奈刻夢は死んだ。
どうしてかは知らない。
でも、犯人は知っていた。

「俺が殺した。」
天都長司は、クッキーを貪りながら言った。
「俺が鎌奈刻夢を殺した。」
「...え?」
「巷で噂の殺人鬼っていうから、一度戦いたかったんだよ。
あー、死刑にされる前に殺せてよかった。」
長司が何を言ってるのか、
紘一は理解しかねた。



「...刻夢は、すごい奴だったよ。」
目の前にいる刻夢の弟たちに語り掛けるように、
紘一は言った。
「だから、そいつから頼まれたからやんなきゃな、って思ってさ。
そりゃ、この姿になれるまで苦労して、
でも、刻夢と君たちが喜ぶのなら、いいかな、って。」
気付けば涙が零れ落ちていた。
「僕は、馬鹿だったのかな。今の君達には刻夢はいらないんだ。」

「俺だって、生きてるかもしれないって知って、舞い上がったよ。」
佳夢が、自嘲するような笑みを浮かべて言った。
「でも、やっぱいないよ。もう、刻夢兄さんは。」
「...。」
「あと、謝んなきゃいけないことがある。あんたに。」

このことを他人に言うのは、久々の事だ。
最後に話したのは誰かは覚えていないが。
これで、出来れば最後にしたかった。

「刻夢兄さんは、俺の身代わりに死んだんだ。」