複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.232 )
日時: 2013/01/27 22:49
名前: 純金リップ (ID: 5Yz4IUWQ)

途中、誰かとすれ違った気がして、
佳夢は振り返ったが、
人ごみの中には、知ってる人の顔などなかった。

「佳夢...?」
不思議そうな目で佳夢の顔を覗き込む留理。
「あ、いや、なんでもねーよ」
ごまかして、前に進みだす。

「それにしても、長いね、この商店街」
「そうだな。ま、だからこそいろんな店があって、
人気だったりするんだけどな」
何気なく会話をしながら歩いていると、
とあるケーキ屋の前を通り過ぎた。

そこから発せられる甘い匂いに、
留理の脚が自然に止まる。
「ん?どうした?」
「えっと、その...」
ちらちらと視線がケーキ屋にいくので、
佳夢はすぐに勘付く。

「ここに寄りたいのか?」
留理は声には出さず、うなずいて肯定する。
「わかった。買って、どっかで食おう」
ぱっと笑顔になる留理に、
思わず佳夢は顔を赤くする。

ケーキ屋に入ると、愛想のいい店員たちが
「いらっしゃいませー」と佳夢達を迎える。

留理はショーケースを目を輝かせながら見つめ、
あれにしようか、これにしようか、と迷っていた。
佳夢は完全にチョイスは任せたので、
店の端で待機していた。

「佳夢」
留理が佳夢を呼びながら、服の裾を引っ張る。
「ん?決めたか?」
「うん。あのショートケーキがいい」
留理はショーケースの中にある、
苺の乗ったショートケーキを指さす。

ほかの物より比較的安く、
また、佳夢もそれなら食べられるので、
それを買うことにした。

二人はレジに向かった。
すると、留理の動きが止まったかと思えば、
前方から来た男と肩がぶつかった。

「いてて...」
「う、あ、大丈夫、ですか?ごめんなさい」
あわてて留理は謝る。
「いや、別に怪我はねーし——」
男は眼鏡の位置を直しながら立ち上がる。

留理の顔を見た瞬間、
男の表情が固まった。
佳夢はそれに気づいて、不審に思う。

すると、男はおもむろに留理の顔を触り始めた。
「おい、お前何して——」
「留理!留理じゃねーか!」
佳夢が止めようとした瞬間、
男は叫んだ。

留理の事を知ってるらしい。
しかし、留理は訳が分からないという表情で、
留理はこの男の事を知らないらしい。

「ちょ、なんですか?誰ですか?」
「え?俺だよ、俺」
「いや誰だよ」
佳夢がすかさずツッコミを入れる。

「蓮だよ!椎名蓮!」
椎名蓮——それが男の名らしい。
とりあえず、新手のオレオレ詐欺じゃなさそうだ。