複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.259 )
日時: 2013/02/03 22:26
名前: 純金リップ (ID: 5Yz4IUWQ)
参照: 一応、過去の話です

痛みはさらに増していく。
「うがああああああああああああああ!!」
今度は意図したものでなく、
普通に、痛すぎて叫び声をあげていた。

「うるさいな、少し黙れ」
佳夢は自分の上に乗っかったタタネをどかそうと、
体を動かそうとするが、すこしも動けない。
普段の佳夢なら、タタネぐらいの女子をどかすのは、
赤子の手を捻るようなものなのだ。

「よし、もういいかな」
そう言って、タタネは指を離し、
まるで体操選手のように飛び、
佳夢の上からすぐさま退いた。
「ま、悪く思うな、佳夢。お前に要る能力じゃ——」

台所から出ようとして、
タタネは振り返る。
「——お前...」
タタネは信じられない様な表情をした。
そんな顔はレアなので、
佳夢も少し驚いた。

タタネの見た佳夢は、
しっかりと二本足で立っていて、
すこし息が切れてるくらいで、
腕も、脚も、不自由なく動かしていた。

「お前、それ喰らったら、少なくとも十分は動けないぞ...」
「あぁ?知るか。それよか、さっきのは痛かったですよ」
不機嫌そうな顔で、佳夢は呼吸を整える。
「もう、こっちも攻撃していいんですかね?」
「——できるものならな」

タタネが言い終わる前に、
佳夢は走り出していて、
右手の拳をギュッと握っていた。

何も言わず、無表情で、
佳夢はタタネに向かって拳を放った。
タタネはそれをよけようともせず、
佳夢は少しひるんだが、
だが、拳を止めることはできなかった。

拳が当たることはなかった。
佳夢の目がおかしくなければ、
拳は確かにタタネの顔面の目の前だったはず。
しかし、当たる前に、
タタネの拳が見事に佳夢の鳩尾を捉えていたのだった。
まるで、タタネの方が先に攻撃したかのように。

その強靭な攻撃に、
佳夢はひざから崩れ落ちる。
一、二秒呼吸が出来なくなる。
「これも、私の能力の一つだ。頂き物だがな」
得意げに話すタタネの言葉も、
あまり耳に入らない。
呼吸をするので精一杯だ。

「いいか、佳夢」
しゃがんで佳夢に視線を合わせて、
タタネは語り掛ける。
「この世に、超能力はあるんだ。そして、誰にでも。
それを才能とも言うな。ただ、気付いてる奴が少ないんだ。
それに、そういう能力に気付いた奴を育てる高校もある。
私はそこに入る予定だ」

佳夢はタタネの言ってることを
全て戯言ととらえながら聞いていた。
全くもって信用し難い話を。
「ま、お前の能力、というか才能は、
私が奪ってやったから、気にするな。
お前は、一般人として生きていればいい」

タタネは今度こそ、
台所を出る。
廊下を音をたてて歩いていると、
ひとつ、足音が多い事に気付く。
「!!」
振り返ってみると、
ゆっくりではあるが、
佳夢が辛そうについて来ていた。

もうかける言葉も見当たらず、
タタネは呆然としていた。
「どうしたんすか、タタネさ、ん」
不敵な笑みを浮かべて、
佳夢はそのまま前に倒れた。

「まさか、こいつ...」
佳夢の能力は確かに奪った。
タタネはそこである可能性を思い浮かべた。
「もう一つ、能力が——?」
可能性として、なくはない。
それならば、とタタネはしゃがんで、
人差し指で佳夢に触れようとした、が。

「やめてやるか」
そういう気分じゃなくなって、
タタネは立ち上がった。
「こいつは、なかなか面白そうだしな」

タタネが何も言わず帰ったのは、その晩であった。