複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.266 )
日時: 2013/02/07 23:44
名前: 純金リップ (ID: 5Yz4IUWQ)
参照: 本当は佳夢君そんなに強くないけどね

「そうだ、佳夢君。陣呉君は、どうなったの?」
佳夢はその質問に対して、
少し答えに詰まる。
聞かれるとは予想していたが、
いざとなるとやはり言いづらい。
「...あいつは」

佳夢は、先にすべてを語った。
愛子がここにきたときの事、
刻夢の偽物が現れた事、
そして、陣呉に再開し、
彼が天都家の一員となったのを知ったこと。

聞き終えた咲は、
暗い表情をして、うつむいていた。
「本来は、もっと早く話すべきだったんだろうけど...」
「いや、いいよ別に」
咲は悲しみを押え、顔を上げる。
「ありがとう、話してくれて」

咲は困ったように溜息をつく。
「でも、どうしようか?」
「俺は、陣呉を連れ戻したい」
佳夢は強い口調で言う。
咲もそれに同意するように頷く。

「あ、そうだ。役に立つと思って持ってきたものがあるんだけど」
「は?」
膝に置いた鞄から、箱を取り出す。
その箱を机に置いて、
鍵を開ける。
「はい。開けてみて」
不思議に思いながら、
佳夢は言われるがままに箱を開ける。

その中身が見えた瞬間、
佳夢はギョッとした。
「お前...、これ銃じゃねえか!」
箱に入っていたのは、
普通の拳銃であった。
しかし、拳銃である時点でもう問題である。

「大丈夫!構造は覚えたから!」
「いやいや、全然ダメだから!」
「私さ」
咲は声を低くして、
真剣なまなざしを佳夢に向ける。
「佳夢君みたいに戦えるようになりたかったんだ。
だって、陣呉君を取り戻したいから」

佳夢はいつになく熱い咲の言葉に戸惑いつつ、
それを腕を組んで聞いていた。
「だから、家に帰ってから私は、強くなるために頑張った」
「言わせてもらおう。それは間違いだ」

ついつい我慢できなくなり、佳夢は口を出す。
「お前がそこまでする理由が、どこにある?」
「...っ!でも、私は、佳夢君まではいかなくとも、
ある程度、強くなってきたんだよ」
「そうか。でも、誰かお前に戦う事を強要したか?」

咲はたじろぎつつも、反論しようとする。
「私は!私の意志で——」
「知るか!いいか、お前の選択は間違いだ。
強くなったらなったで、手放すものはたくさんあるぞ!」
部屋の中に、佳夢の怒号が飛ぶ。

「お前は、普通の女子高生であるという、
幸せな生き方を捨てたんだぞ!」
「そ、それでも私は——」
「咲!いいか、」
佳夢は人差し指をたて、咲を指さす。
「この戦いに関わるな。
それがお前が普通に生きれる最後のチャンスだ」

咲は何も言わず、
何かをこらえるような表情で、
銃の入った箱をしまった。
「出てって、佳夢君」
佳夢は何も言わず、立ち上がった。


「性格悪いなぁ、自分」
部屋の外に待ち構えるかのように立っていた菊花は、
夕空を見上げ、挑発するように言う。
「何もあそこまで言う必要ないんとちゃうん?」
「俺は変な争いに女子を巻き込みたくないだけだ」
「ふうん。ジェントルマンやなあ」
にやけた顔で言われても嬉しくない、
そう思い、佳夢は顔をしかめる。

「お前も、十分性格悪いよ」
盗み聞きばっかしやがって、と佳夢は、
彩奇が殺された後の菊花との会話を思いだし、毒づく。
「にしても、ワシは別に戦ってもいいんやな?」
佳夢の毒をスルーし、
菊花は佳夢をからかう。
「お前がもっとか弱かったら、止めてるさ」

しかし佳夢は少し考えて訂正する。
「いや、できればお前もやめてくれ」
「?意外やな。そんなこと言うなんて」
「...あんまり、早死には良くないだろ」
「ハンッ。ワシが死ぬとでも?」
「泥棒風情が長生きできると思うな」
「だから!ワシは義賊鼠小僧や!」

珍しく腹を立てた菊花は、
素早い足取りで、何処かへ去ってしまった。
「...本当は助けてもらいたいよ」
夕空に向かって、佳夢は呟いた。