複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.277 )
- 日時: 2013/03/12 21:36
- 名前: 純金リップ (ID: AO7OXeJ5)
- 参照: キョウリュウジャー面白い
愛子は佳夢の元を去ったことを後悔した。
たとえ佳夢がどう勘違いしようと、
ちゃんと言えばよかったのだ。
その事実を思い知り、
愛子は床にうずくまる。
その時、足音がして、ふと顔を上げた。
「やあ、君はさっきの子じゃないか」
「あ、どうも...」
それは、天都家の〝魔術師〟である、
天都貴弘だった。
なにやらすっきりとした顔をしている。
「あ、えーっと、解放されたんですか?」
「うん。いやぁ、あの人たちこわいねぇ。特に権砕さん」
権砕は佳夢の曽祖父に当たる人物だが、
愛子からすれば優しいおじちゃんという
印象しかなかった。
「でも、良かったですね」
「あはは、ありがとう」
愛子は自分でも貴弘と会話できるのが不思議だった。
不審者なのには違いないが、
だが、貴弘はどこか憎めない性格をしてるのである。
また、愛子が普段は社交的という面も、
ここでは役に立っている。
どんな人とも会話を合わせるのが得意で良識な愛子は、
変人だらけの鎌奈家からしてみたら、
逆に浮いていた。
「じゃ、僕はこれから帰るよ」
「迎えの人とか来てるんですか?」
「あー...、来るよ」
「へえ。それじゃ、お気をつけて」
愛子は一礼をして、
その場を去ろうとした。
一旦佳夢のところへ戻るため。
しかし、何故か肩をがっちりつかまれ、
愛子は後ろに倒れそうになる。
そのままぐいっと引っ張られ、
貴弘の胸部を背に、愛子は後ろから抱えられる。
「え...?えっ?えっ?」
「君も来るんだ。押崖愛子」
愛子の口に何かが当てられ、
愛子は叫ぶ間もなく気絶していた。
「...全く、君は運がいいんだか悪いんだか」
誰にも気づかれず、鎌奈家の外へ愛子を持ってきた貴弘を
待ち受けていたのは、零番目の愚者、
天都長司だった。
「ここぞという時は、絶対に成功するよね」
「...お誉めに与って光栄です」
長司の車に乗り、二人は夜の住宅街を走り出す。
「しかし、夕子さんもこんな女の子さらってどうするんだろ?」
「夕子さんの情報では、この子は佳夢君の『大切な存在』だとか」
へぇ、とどうでもよさそうに相槌を打つ長司。
「まさか、この子を餌に鎌奈佳夢をおびき出すって魂胆?」
「そうじゃないでしょうかねぇ...」
「だとしたら間抜けだぜ。そんなの、特撮じゃお決まりのパターンだ
悪の組織が全員やられておーしーまーいー」
「ちょっとテレビの見すぎじゃないですか?」
信号が赤になったので、
後部座席に眠る愛子を長司は覗き込む。
「しかし、可愛いなぁ、この子」
「変なことしないでくださいよ」
「え?駄目なの?」
「するつもりだったんですか...」
「だってさ。男二人。夜道。眠る少女。やる事は決まってない?」
「あなた今どこの悪役よりも悪役らしいですよ...」
仕方ない、と言った表情で、
長司は目を瞑る。
「いいんじゃない?俺たち一族はいつでも悪役だ」
「...」
その日の十一時。
鎌奈家は騒然とした。
権砕らが貴弘を連れて行った場所を訪れると、
そこには、権砕たちが倒れていた。
かろうじて息をしていて、
体はズタボロになっていた。
その十分後くらいに、佳夢が気付いた。
愛子がいない。
二つの事件に皆騒然とし、
そして、一人の犯人を皆思い浮かべた。