複雑・ファジー小説
- Re: 【早速オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族 ( No.3 )
- 日時: 2013/08/07 16:24
- 名前: 純金リップ (ID: /gz88uq5)
東京郊外に建つ家。と言うよりは屋敷。
それこそ、鎌奈佳夢の住む家であった。
敷地面積は某夢の国と同じくらい。
そこには先程のリビングのような部屋もあれば、
個人の部屋もあり、さらに地下まである。
全体的に和風。大きな塀に囲まれている。
この屋敷が立った時、周辺住民は大変驚いたことだろう。
そしてその屋敷で一際大きな部屋。
宴会が出来るのではないかという程の部屋。
そこで鎌奈権砕は胡坐をかきながら待っていた。
鎌奈権砕。
八十五歳。男。曽祖父。政治家。射手座のA型。
趣味は百を超える。最近のマイブームは筋トレ。
一族きっての権力者。
「よく来たな...。」
佳夢はゆっくりと歩きながら、権砕の前に正座をする。
「何の御用でしょうか。」
緊張した口ぶりで尋ねると、権砕は口を大きく開けて笑った。
「そんな改まる事じゃあない。別にお前に何かしようと言う訳じゃない。」
「それじゃ...、なんですか?」
「お前に頼みごとがある。」
権砕が取り出したのは一枚の手紙。
それを広げて佳夢に渡す。
その内容に佳夢は絶句した。
『 殺す。
一族全員殺す。
一人残らず絶対に殺す。
巷で噂の虐殺師より』
達筆な字でそう書かれていた。
「な...これは...。」
「ひどいだろ。」
「こんなの、無謀だ。」
あまりにも無謀で、絶句してしまった。
これは、自殺行為か。
「儂も無謀だとは思う。」
「無理だ。」
多分この虐殺師とやらは一人として殺せず——死ぬ。
「わが一族も甘く見られたもんだ。変人製造機とも言われているのに。じゃが...。」
「あまりにも無謀すぎて、怖い。」
権砕は一瞬驚いたような顔をして頷く。
「そうじゃ。だからこそ、お前の力を借りたい。」
「お、俺の力...?」
佳夢は唾を呑んだ。
「あぁ、一族きっての——いや、これは言うべきではないか。お前にとっても思い出したくない過去だろ。」
手紙を権砕に返し、立ち上がろうとする。
「あ、いや、待て。話しはそれだけじゃない。」
「え?そうなんですか?」
「あぁ。大した話じゃないが。」
権砕は静かに息を吸って。
「お前、彼女とかいないの?」
「...なんですか唐突に。」
「いや、もうお前も十八じゃろ。彼女の一人や二人、作ったらどうじゃ。」
「彼女は一人までです。」
「いやぁ、じゃが、見たいのぉ。お前の息子の顔。」
「うっ...。」
「真夢でもよかったが、アイツはどうもその辺は鈍いからな。」
「...わかりましたよ。彼女つくりますよ。いつか。」
「五月までね。」
「えっ!?」
権砕の部屋から出て、重い足取りで自分の部屋に向かっていると、
名前を呼ぶ声が聞こえ、足を止めた。
「佳夢クン。」
佳夢を呼び止めた人物は、長い髪をなびかせこちらに歩いてくる。
「おじいちゃんの部屋から出てきたけど、どうしたの?」
鎌奈彩奇。
二十八歳。女。叔母。銀行員。蟹座のA型。
彼氏いない歴が年齢。でも美人。
一族きってのポジティブ。
「彩奇さん。帰ってたんですか。」
「まぁね。」
耳につけてるイヤホンからは音が漏れ出している。
恐らく、曲を聴いた状態で会話しているのだろう。
とても失礼だとは思うが、言い出せない。
そんな佳夢に気付いたのか彩奇はイヤホンを外す。
「で、なんの話をしてたんだい?」
「特に大した話は...。」
「曾孫に彼女を作れと急かすなんて、おじいちゃんも変わっている。」
聞かれていた。というか、知ってるなら聞かないでほしい。
だが、聞いていたのはそれだけのようで、
あの例の虐殺師の事は聞いていないらしい。
「しかし佳夢クン。恋人を作るのはかなり難しいぞ。僕が言うんだ。間違いない。」
若干説得力がないが、有難く聞いておくことにした。
「だから、女を落とす攻略法を教えよう。」
「え、そんなのあるんですか?」
それは是非聞きたいので、佳夢は耳を傾ける。
「いいか。まずはクラスで孤立している子を探せ。そして、声を掛けるんだ。その後、休み時間を一緒に過ごす。さすれば、いちころさ!」
「いやそれ貴方の体験談でしょう。」
何年か前に彩奇本人から聞いた。
そもそも、佳夢のクラスにそんな女子はいなかった。
「知っていたか。でも、あの時は見事に騙された。勇気をもって告白したら、ものの見事に振られた。あれほど悲しいときはなかった。クラスで孤立する女子を演じるのも、楽じゃないのに。」
思い出に浸るように、彩奇は語る。
「それも聞きました...。」
「ありゃ?そうだっけ?まぁ、それを機に僕は僕っ子になったわけだ。あの日がなければ、僕は僕っ子じゃなかったと思うと、あれもいい経験だった。」
「なぜ?」
佳夢はそのポジティブさが理解できないほどうらやましかった