複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.306 )
- 日時: 2013/09/02 21:13
- 名前: 純金リップ (ID: /gz88uq5)
「...ん?」
愛子が目覚めて数時間経った夜、
掃除機をかけていた夕子の手が止まる。
「どうしたんですか夕子さん」
「いや、なんだろ。気配がする...」
その瞬間、突如大きな破壊音がしたかと思えば、
玄関の方から、慌てたように音海が走ってきた。
「うわわわわわ!ゆ、夕子さん!たいへん!」
そう言って夕子に泣きつく音海を、
夕子は抱き寄せて慰めた。
「落ち着いて音海ちゃん。...長司君は?」
「そ、それが...」
音海は玄関の方を見る。
愛子と夕子も、つられてそちらを見た。
「あ、佳夢君」
それは佳夢だった。
いつも以上に鋭い目つきでこちらを睨んでおり、
思わず愛子は息を呑んだ。
夕子はというと、それを見て即断即決で、
愛子を掴んで、ナイフを突きつけた。
「これ以上来るな、鎌奈佳夢」
「...」
愛子は佳夢が猪突猛進に襲ってくると思っていたが、
思いのほか冷静らしく、足を止めて、夕子の言葉を聞いていた。
「...まず聞くけど、長司君は?殺した?」
「いや、死なない程度にいたぶった。殺さないって約束してんだ」
「ふうん。んで、君はここに何をしに来たの?」
「それは、俺にも分からん。多分、敵討ちだ」
「そう。私たちと同じだね」
夕子はナイフを、愛子の首筋へと近づける。
「ひっ...」
怯える愛子に、夕子は小声で言った。
「大丈夫。殺す気はないよ、妹ちゃん」
一方で、佳夢の淀んだ瞳は、
その形に口が動くのを捉えた。
相手に愛子を殺す気がないと分かった以上、
躊躇いはしなかった。
一気にフローリングの床を蹴り、佳夢は駆け出した。
シャツの袖から小型ナイフをだし、鋭い刃を、
夕子目がけて振り下ろした。
「うおっ、危なっ!」
夕子は顔を右に逸らして避けるも、刃は頬を裂き、
そこから微かに血が漏れ出す。
「やってくれるね、佳夢君」
このままやられっぱなしも分が悪いので、
夕子は愛子の腕を掴んだまま自分の後ろにやり、
佳夢の腹に蹴りを入れた。
「よっ——し?」
だが、佳夢ともあろう人物がそれをマトモに食らう筈も無く、
自分の胴体にめり込む夕子の脚を、片手で強く掴んでいた。
「うわわっ」
そのまま、夕子を引き寄せ、ナイフを振り下ろした。
「うっ——あああああああああ!!!」
夕子の悲痛な叫びがこだました。
ナイフは見事、夕子の右目に刺さっており、
そこから大量の血があふれていた。
「ゆ、夕子さんを!このっ!」
先程まで泣いていた音海が、素早い身のこなしで、
佳夢の後ろへと回り込み、そのまま跳んで、
銃を突きつけた——が。
「!!」
その銃を撃つ前に、佳夢は振り返り、音海の首を掴んで、
そのまま強く締めようとした。
勿論、死なない程度に加減はしているものの、
苦痛は激しい物であろう。
「くっ、かはっ...」
音海の首を絞めたまま、佳夢は、今度は夕子の眼からナイフを引き抜き、
その勢いで、音海を刺そうとした。