複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【是非見てね!】 ( No.307 )
日時: 2013/09/02 21:34
名前: 純金リップ (ID: /gz88uq5)

「ちょっと、佳夢君!」
音海を突き刺そうとしたその手を止めたのは、
愛子だった。
夕子から逃れて、佳夢の行動を見かねての彼女の行動に、
佳夢は大変戸惑った。

「そんなひどい事、しないでよ!」
「あ、いや、押崖。別に俺はこいつを殺すわけじゃ」
「それでも!駄目だよ!そんなことしちゃ!」
そういえば、と佳夢は思い出した。
愛子は、佳夢が元殺人鬼だと言う事を知らないのだった。

だから、必死で止めようとしているのだろう。
愛子の言葉に佳夢は落ち着きを取り戻し、
何より、愛子にそれを言わせてしまったという事実が、
佳夢を冷静にさせた。

佳夢が音海の首から手を離すと、音海は床にばたりと倒れた。
死んではいないらしいが、気絶している。
「...」
もし、このまま刺していたら、殺したかもしれない。
非常に情けない気持ちで、佳夢は一杯になる。

「あ、甘いんだね...佳夢君...」
佳夢と愛子の後ろで、右目を押えながら夕子は、
それでもなお笑いながら言った。
「甘いよ...」
「いや、十分厳しいだろ」
「そうかな?人一人子殺せない君は、甘々だよ。
甘党の私も、吐き気を催すくらいにはね...」

佳夢の目に映る夕子は、狂っていた。
佳夢の中の夕子の幼少の頃遊んでいた時のイメージが、
一気に崩される様で、気分が悪かった。

そしてその気分の悪さを払しょくしようと、
夕子に近づこうとしたとき、後ろに気配を感じた。

「甘いですよ、佳夢さん。どんだけ甘々なんですか?」
その声の主の見当は大体ついていた。
しかし、振り返れなかった。
何故なら佳夢の視線は、愛子の脇腹から生えるようにして存在する、
その長い刃に向かっていたからだった。

コンマ何秒かが、佳夢には数時間に感じられた。
血が一滴、床に垂れる音でハッとする。
それは、愛子の口から流れ出ている血だった。

剣が愛子の脇腹から抜かれ、それを追うようにして目線を後ろにやると、
そこには、鎌奈陣呉が立っていた。
「——ッ!陣呉ぉぉぉぉ!!」
「どうも、佳夢さん」