複雑・ファジー小説
- Re: 【早速オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族 ( No.35 )
- 日時: 2012/08/27 23:21
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
「琥珀じゃん。」
「いやー、色々大変ですね〜佳夢君も。」
「...一応聞くが、何についてだ。」
「虐殺師退治。」
「誰から聞いた?」
「菜夢から聞いたんですよー。」
佳夢はこみあげる殺意を押え、会話を続ける。
「お勤めご苦労さんでーす。」
「そいつはどうも。で、何をしに来た。」
「ちょっと、バトルしに来たんだ。」
笑顔のまま琥珀は言う。
「...そうか。残念だが、断るぜ。」
「ただ戦ってもつまんないから〜。」
「聞けよ!」
「賭けをしましょう!」
琥珀は人差し指をたてて、そう提案した。
「私が勝ったら、佳夢君の虐殺師退治に協力させてもらいます!勿論私だけでなく、真夢ちゃんと菜夢も一緒に。」
佳夢の中で何かが音をたてて切れる。
恐らくこの賭けを提案したのは菜夢だ。
今なら殺意の波動に目覚めそうな佳夢であった。
同時に、あえて琥珀を選ぶとは、敵ながらナイスチョイスと思った。
なぜなら。
「いやぁ...。楽しみだわ。夢の対戦カードを作ってくれた菜夢には感謝だね!」
「俺はちょっとキレそうだが。」
「でも、本当に戦う相手が佳夢君でよかった...。だって、
佳夢君なら猫をかぶる必要もないし。」
これだ。
こうして、佳夢と琥珀は地下室に来た。
向かい合ってみると、琥珀はいつの間にか
また大きくなってることに気付く。
「じゃ、覚悟はいい?佳夢君。」
琥珀は自分の父親である紅介の警棒を構えて、佳夢を睨む。
「おうよ。いつでも来い。」
足を延ばす準備体操のような動きをしながら、佳夢はそう返事をする。
しかし、琥珀には分かっていた。
佳夢は覚悟すらしていない。
この戦いを本気で戦うつもりがない。
「それじゃ——。」
そんな自分を甘く見る奴に、琥珀は、手加減するつもりがなかった。
「行くよっ!」
琥珀が地面を蹴る音が室内に響いた。
一時間もせず、佳夢は部屋の中心で倒れていた。
戦闘中。
琥珀に一切手を出さず、隙だらけだった彼は
ひたすら耐えることに専念していたが、
ついに倒れた。
息を切らし、視界が霞んで、意識も朦朧としていた。
「全く——。」
琥珀は退屈そうに髪をいじりながらため息をつく。
「手加減するとか、そういうレベルじゃないね。」
「...。」
「最低。」
これは挑発でも何でもなく、彼女の心からの文句であった。
「もう、決着はついたね。帰るから。私。」
「...いや。」
佳夢は、一時間ぶりに口を開く。
「まだだ。」
ボロボロになりながらも、右腕一本で立ち上がり、
琥珀の方を向く。
「まだだぜ、琥珀。」
「——なんで?」
琥珀は首をかしげる。
「もう決着はついたでしょ?佳夢君はいま自他共に認める満身創痍だし、私は無傷。これはもう、完璧に決着でしょ。」
「満身創痍、だな。けど、それだけで負けは認めない。」
佳夢は拳をぐっと握りしめる。
「俺に負けを認めさせたかったら、殺せ。俺を。」
「——私、そういうのは好きじゃないんだけど。」
「それでもやれ。殺せ。殺せ。殺せよ。琥珀。」
佳夢は笑って言う。
いつもの様な笑みではなく、狂気に満ちた笑み。
それを見て、琥珀は——。
「じゃ、お望みどおりにしてあげる。」
再び警棒を構える。
佳夢に向かって走り出す。
数センチ前まで来て、警棒を振りかざす。
「死ね。」
しかし。警棒が佳夢に当たることはなかった。
それは、決して琥珀が躊躇した訳ではない。
彼女は完全に、佳夢を殺しにかかった。
では、何故か。
「...おい、琥珀。」
「何?」
佳夢は警棒を完全に避け、
琥珀の、後ろに立っていた。
「甘いよ。」
佳夢は足を振り上げた。