複雑・ファジー小説

Re: 【早速オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族 ( No.49 )
日時: 2012/08/08 00:15
名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)

そして、一通りやることを終えた佳夢は部屋に戻った。
「とりあえず、取り調べっつーか、
ま、聞き込みは終わったかな。」
「何の聞き込みをしてたんだよ。」
紅介は佳夢の持つ紙を覗き込む。
「あぁ、その日の夜に何をしてたか、ね。
随分ありきたりじゃないの。で、どうだった?」
「う〜ん...。やっぱり深夜たっだし、出歩いてる人も少なかった。ま、でも白銀兄妹からの証言は得られたわけだし。それだけでもいいか。」
菊花は出かけていた時彩奇を見たと言っていたので、
これで、別の場所で殺されたという可能性も完全に消えた。
「でも、二人のどっちかが彩奇が殺された現場を見ててもいいもんだけど...。」
「そうですね...。」
ただあの二人に犯行は不可能だと佳夢は思っているので、
さらに、難解になってきた。
「一体、彩奇さんを殺したのは誰なんだ...。」

「なあ...。やっぱり彩奇を殺したのは、部外者なんじゃないのか。」
「...。」
佳夢は黙り込む。
しかし、紅介は構わず続ける。
「やっぱりこの家の中にそんな奴はいないんだよ。
そりゃ、泥棒とかなら居るけどよ。
人殺しをするような奴はいないって、俺は思うぜ。佳坊。」
やがて、佳夢は立ち上がって部屋を出ようとする。
「...人殺しなら、居る。
人殺しは、確かに居る。」
「なんで、そんな事が...?」
「勘ってやつ、ですよ。」
そう言って佳夢は部屋を出た。

考え事をしながら廊下を歩いていると、急に何者かに引っ張られ、
部屋の中へ引きずり込まれた。
そこは、菜夢の部屋だった。
そして、そこにいたのは菜夢、真夢、裏夢の三人であった。
呆然とする佳夢を三人が取り囲むようにする。
「...なんだよ、お前ら。」
「いえ、ちょっと佳夢兄さんに報告することがあるのよ。」
「そうなんだよ、お兄ちゃん!」
「...えっと、そういう事。」
佳夢を取り囲む輪から最初に菜夢が抜け、机の引き出しから何かを取り出す。
それは、洒落た便箋。
菜夢は、それを黙って佳夢に差し出した。
しかし、佳夢はそれを受け取らず、菜夢を睨んでいた。
ついに痺れを切らし、菜夢は便箋を佳夢に押し付ける様にして渡す。
佳夢はそれを渋々受け取る。
便箋の中に入ってる紙を取出し、そこに書かれた文面を読む。

『四月二十一日の午前三時。
庭の松の木の下にて待つ。』

それを読むと、佳夢は顔をあげ、再び菜夢を睨む。
「お前、これを何処から。」
「彩奇さんの部屋よ。誰から送られてきたのかは不明。
ま、筆跡を調べればわかるかもね。」
「彩奇さんの、部屋?」
佳夢の疑問に対し、真夢が答える。
「うん。あのね、咲ちゃんが来たから
彩奇さんの部屋を貸してあげることになったの。」
「いや、それは知ってるけど...。」
「でね、その時、私と裏夢で彩奇さんの部屋を掃除したの。
えっと、でも、それは、あの...。」
「私の命令よ。」
菜夢が真夢の言葉を遮って、言った。
なんの迷いもなく。
「言ったでしょ?佳夢兄さんの協力をするって。」
「...。」
「だから、これはその一環——。」

瞬時に、佳夢が菜夢の目の前まで迫りくる。
「菜夢。」
「...何?」
一瞬菜夢は物怖じた表情を見せた物の、また、元に戻る。
一方の佳夢は般若の如き表情をしていた。
「もうこれ以上、この事件にかかわるな。」
「...それは、無理な話よ。」
「いいか。これは遊びじゃない。勉強にはならない。
お前らがこれに関わっても良い事は一つもない。
ただ、人間の可笑しさを知るだけだ。」
「——わからないわ。佳夢兄さん。
どうしてそこまで、私たちの協力を拒むの?」
緊張感が漂い、真夢と裏夢は部屋の端にかたまり、
佳夢と菜夢の対峙をこわばった表情で見ていた。
「決まってんだろ。」
依然として菜夢を睨む佳夢が、答える。
「俺はお前らの協力なしで、彩奇さんの仇を取りたい。」
「それだけ?」
「ああ。それだけだ。だからもう。
——お前らは関わるな。これ以上。
頼むから、関わらないでくれ。」
それだけ言い残し、佳夢は手紙を握ったまま部屋を出た。

再びその手紙に目を通し、
佳夢は眉間にしわを寄せ、ため息をつく。
しばらくすると、後ろから裏夢が追ってきているのに気付いた。
「なんだ、裏夢。」
振り返らずに、佳夢は言う。
「本当に、分っかんねえ。なんで、あそこまでしてもらって、
佳兄があんなことを言えるのか。分かんねえ。」
「いいんだよ。それが正常だ。」
「なーちゃん。泣いてたぜ。佳兄が部屋を出た後。」
「それがどうした。いい加減諦めてもらわないと困る。」
そう言って後ろを振り向いた瞬間、裏夢が佳夢の首に掴みかかった。
「あんた、分かってねえよ!
なーちゃんはなあ、佳兄の助けになりたいんだ!
それくらい、分かれよ!」
「分かってるよ!」
佳夢は裏夢の手を振り払う。
裏夢はその反動で、床に尻もちを突く。
「でも、これは俺の事件だ!お前らを関わらせたくない!」

「なんで——?」
「は?」
「なんであんたの事件なんだよ!これは、一族全員の事件だろうが!
彩奇さんが殺されて、一族皆で解決するはずの事件だろうが!
誰になんと言われようと、皆で仇を取らなきゃいけない——。」
「違う!!」
佳夢は叫んだ。
そして、裏夢に手紙を見せながら言う。
「いいか、裏夢。この手紙はな——。」






「俺が受け取った手紙なんだよ。」