複雑・ファジー小説
- Re: 【早速オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族 ( No.51 )
- 日時: 2012/08/08 19:19
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
それは三月十三日の朝の事。
机に置かれた謎の便箋。
そこに書かれていた内容。
そして衝撃。
その全てを佳夢は覚えていた。
だが、佳夢は瞬時に冷静になり、悪戯だと思った。
取りあえずその手紙はポケットに入れて持ち歩いていた。
しかし、それが失敗だった。
恐らく、その日の昼ごろ。
失くしたのは彩奇と会った時だろう。
失くしたのは気づいていたのだが、
行くつもりはないので気にはしていなかった。
「彩奇さんが殺されたのは、俺の所為だ。」
「...。」
「彩奇さんは俺の代わりに殺されたんだ。
本来、俺が殺されるはずだったのに...。」
偶然の産物なのか、また、意図したものなのか。
どちらにせよ。
彩奇が佳夢の身代わりになったのは間違いなかった。
「...でも、わざわざ佳兄一人じゃなくても...。」
「すまん。わがままだってのは分かってる。人一倍にな。
でも、それでも一人でやり切りたい。」
佳夢は手紙をくしゃくしゃにしてしまった。
「じゃ、行くわ。」
裏夢は追わずに、踵を返して、菜夢の部屋に向かった。
手紙は見つかったものの、犯人が分かったわけではなかった。
「どうしよっかな〜。」
結局、誰に事情聴取しても収穫はナシ。
彼岸も菊花もなにも不審な点はなかったと言っていた。
うーん、と唸って、頭を掻いた。
すると、正面から咲が歩いてきた。
何かを探しているようで、当たりをきょろきょろ見渡しながら歩いていた。
わざと避けないでやると、案の定、佳夢にぶつかった。
「あ、佳夢君。」
「おっす。なんか探し物か?」
「うん。陣呉君を探してるの。」
「え?陣呉?」
何故陣呉を探してるのかはともかく、取りあえず付き合うことにした。
とは言っても、佳夢にとっては陣呉の居る場所など、
火を見るより明らかだった。
「地下室だな。この時間帯は訓練してるし。でも、陣呉に何の用だ?」
「実はね、今日の二時くらいに陣呉君にあったんだ。
で、事件の話をしててね。だから、その続きをしようと思ったの。」
「へえ...。あいつも事件の話をしてたのか。
って、二時?午前?」
「そうだよ。」
「ふーん。あいつもそんな時間帯に出歩くのな。」
「私はおかしくないみたいな言い方だね。」
咲はジト目で佳夢を見る。
佳夢は一瞬、可愛いと思った。
「でも、陣呉君は散歩は日課だって言ってたよ。」
「知らなかった...。早寝早起きをするタイプだと思っていたが。」
そこでふと思い出す。
そういえば、陣呉にはまだあの日の夜の事は聞いていなかった。
後で聞こう、と考えたところで。
「あ。」
何かがふと、浮かんだ。
「え?どうしたの?佳夢君?おーい。」
佳夢はただ眼を見開いて立つだけで、咲が呼びかけても反応しない。
声を上げて数十秒。
やっと佳夢はもとに戻った。
「いきなりどうしたの?佳夢君。」
「分かった...。」
「分かったって、なにが?」
「犯人だよ!この事件の犯人!」
「え...?嘘でしょ?」
「多分だけど...。ちょっと待ってろ。」
そう言って、佳夢は駆け出す。
「え!?ちょっと待ってよ!」
続いて、咲も後を追って走り出す。
着いた先には、菊花がいた。
「あれ?佳夢に咲やん。どないしたん?」
「菊花。お前に聞きたいことがある。」
「んー?」
「本当に彩奇さんが殺された夜、不審な点はなかったか。」
「うん。なかったよ。不審な点は。」
「違う。お前にとって不審な点じゃないんだ。
えっと、ああもう!率直に聞く!
その夜、陣呉は出歩いてなかったか!」
声を張って、佳夢は聞いた。
一瞬ひるんだ菊花は瞬時にして戻り、首をかしげる。
「何言うてんの?主様。あ、違う。陣呉が夜散歩しとるのは、
当たり前の事やろ?不審な点やないやん。」
「やっぱりか...。」
佳夢は力が抜けたように、膝をつく。
「ね、ねえ...。佳夢君。あんま聞きたくないんだけど、
もしかして、彩奇さんを殺した犯人って...。」
「ああ。」
「斧間陣呉だ。」