複雑・ファジー小説
- Re: 【早速オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族 ( No.55 )
- 日時: 2012/08/08 23:20
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
- 参照: 実はきっちりとした計画がない。つまり、アドリブで書いてる。
「陣呉!」
佳夢は思い切り地下室のドアを開けた。
しかし、そこに陣呉の姿はなかった。
その時、佳夢の携帯が鳴る。
出てみると、陣呉であった。
「もしもし。佳夢さん。そろそろ気づきましたか。」
「お前今どこにいる!」
「倉庫です。」
倉庫とは、屋敷の離れにある大きな蔵の事である。
広いなんてもんじゃなく、東京ドームの四分の三ぐらいはある。
早速、佳夢と咲は倉庫に向かう。
倉庫について、扉を開ける。
吊るされた照明が倉庫全体を照らし、埃が目の前を舞う。
要るもの要らないもの、玉石混合の倉庫の真ん中に陣呉は立っていた。
「どうも。」
「陣呉...。」
「陣呉君...。」
「ま、取りあえず呼吸を整えてください。待ちますから。
地下室からここまではかなり距離があったでしょう。」
陣呉は言った通り、二人の呼吸が整うのを待って、口を開く。
「ご察しの通り、俺が犯人な訳で。」
陣呉は無表情のまま、両手を大きく広げる。
いつもと同じ和服だが、刀は持っていないようだ。
「なんでなの?陣呉君?」
「はい?」
「なんで、彩奇さんを殺したの?」
「なんでって...。」
困ったように頬を掻く陣呉。
やがて陣呉は佳無の方を向く。
「元はと言えば、佳夢さんを殺すはずだったんですけど...。
いや、違うな。殺す、じゃない。挑む、だ。」
佳夢は息を呑む。
咲は、さらに疑問を重ねる。
「挑む...?それって、どういう事?」
「だから、佳夢さんに挑戦状を叩きつけたって事です。
挑戦状...。これも違うな。あ、あれだ。下剋上。」
「下剋上、って...。」
下剋上の意味は咲も分かっていた。
下の者が上の者に挑みにかかる、それが、下剋上。
その意味からすれば、佳夢が陣呉より上ということになる。
しかし、何故佳夢が上に見られているのか。
咲は横目で佳夢を見る。
佳夢の眼は、先ほどまでの佳夢とは全く違う、
別の人物でも見ているかのような、狂気を纏った眼になっていた。
「咲さん。もしかして知らないんですか?」
「...え?」
「その人が、なんて呼ばれていたか。」
陣呉は何やら意味深な言葉を放ち、
咲はその意味を理解しようとしていた。
「それって——。」
「まあ、知らないのも無理はないか。
そうだよな、だって、この家の半分が知らないもんな。」
陣呉は再び佳夢に視線を移す。
「言っちゃっていいですか、佳夢さん。」
「...。」
佳夢は何も答えない。
陣呉はそれを許可と受け取り、うなずく。
「佳夢さんは、
一族きっての殺人鬼
なんですよ。」
「——え?」
「どこの中二だよ、って思うかもしれないですけど、
本当なんですって。」
咲は大きく目を見開く。
「まあ、関わった人が死んでいくっていう皮肉も込められたりしてますが、
本当の意味での殺人鬼でもあります。
佳夢さん。あなたは何人殺したんだっけ?」
「...五十人。」
咲の予想を上回る数字に、咲はさらに驚く。
「ああ、安心してくださいよ咲さん。
さっき、関わった人が死んでいくって言ったでしょ?
それの人数も含んでるんですよ。実際は、二十三人です。」
それでも、約半分だ。
改めて、佳夢の事を見る。
横目ではなく、両目で。
そこにいたのは、変わらない、いつもの佳夢。
そうなのだが。それでも、違う風に見えてしまう。
咲は頭を抱える。
「...咲。」
「な、何、かな?」
「出てけ。」
佳夢は正面を向いたまま、咲に言った。
「え?でも。」
「出てけよ。」
いつもの様に、とはいかず。
平坦で、冷静で、変化ひとつない声で、佳夢は言った。
「怖いだろ?俺が。いいんだ。それで。俺は、おかしい。
狂ってる。狂気に纏わり憑かれている。」
果たして、それは本人の自嘲なのか。他人から言われたのか。
それが分かっても、咲にはそう言える気持ちが分からない。
「だから、もういいんだ。俺はこいつを殺して、そして。
あとは、そして——。」
「違う!!」
咲は心の中で叫んだ。
これは違う。違う。違う。
頭に浮かんだのは普段の佳夢だった。
そして、そこに今見ている佳夢が重なった。
大丈夫。変わらない。
悪魔で佳夢は佳夢であると、言い聞かせ。
深呼吸をして、目を開き。
「大丈夫——。」
唖然とする、佳夢に言った。
「私は、佳夢君は怖くないから。最後まで、ここにいる。」
「終わらせよう。一緒に。」