複雑・ファジー小説
- Re: 【オリキャラ募集中!】鎌奈家の一族【何か新キャラ出てきた】 ( No.83 )
- 日時: 2012/08/13 13:23
- 名前: 純金リップ (ID: EfKicuSN)
- 参照: ちょっと訂正。というか、修正。
三月三十一日。
世間的にはもう春休みであろう。
春休み。
それは新たなスタートに向かい心を躍らせるための長期休暇だろう。
それ故に、そのイメージ故に。
佳夢は、油断をしていたとしか言えない。
「なんで春休みに補習があるんだよ!」
佳夢はコップ一杯の牛乳を飲み干し、机を叩いた。
「なによ、佳夢兄さん。うるさいわね。」
「黙れ勉強好き。お前には分からないだろ、この苦しみ。」
「わかるわよ。だって私、勉強好きでも補習は嫌いだもの。」
「お前の方がわかんねー!」
「勉強は家の方が捗るのよ。」
向かい合って座る菜夢は、ベーコンを噛み千切り、咀嚼する。
呑み込んでフォークで佳夢を指しながら言う。
「まあ、教員の先生だって佳夢兄さんみたいな頭の悪い人のために
わざわざ休暇を使ってくれてるのよ。ありがたく思いなさい。」
「くっ...。言い返せない...。しかしだな、菜夢。
なにも春休みにしなくていいんじゃないか?
だってもうすぐ三年生だぜ?最初ぐらいまったりと...。」
「甘い。」
今度はフォークを本当に頬に刺した。
「いってぇ!」
思わず椅子ごと、後ろへ引く。
「なにすんだよ、菜夢!」
「その考えは甘いわ。佳夢兄さん。」
何事もなかったかのように話を続ける菜夢。
「備えあれば憂いなし。転ばぬ先の杖。などのことわざが示すよう、
準備は大切なの。やっていて損なことはないわ。」
「むう...。」
「ほら、納得した。」
「ま、参りました。」
佳夢は深くため息をつく。
「でも佳夢兄さんも大変ね。色々と。」
「おうよ。」
「受験勉強に、陣呉さん奪還に、彼女作り。」
「最後のはお前に話した覚えがないんだが。」
「菊花さんに話を聞くぐらい、簡単だわ。」
「あ、あの野郎!口が軽いぞ!」
佳夢は思わず立ち上がる。
すると、そのタイミングで白美が入ってきた。
「佳兄、なに叫んで——、あ、な、菜夢...。」
「ん。久しぶりね、白美。」
「あ。ああ。久しぶり。」
途端に白美の顔が赤く染まる。
これはもう完全にフラグだ、と佳夢は察していたが、
菜夢は勉強はできても、案外その方面では鈍いのだ。
特に、自分の事に関して。
「白美、邪魔。入口に立つな。」
雰囲気をぶち壊す様に、琥珀が白美の背中を蹴りあげた。
白美はそのまま床に倒れ、すぐに起き上がった。
「何すんだよ琥珀!」
「あ、菜夢おはよ。」
「おはよう。」
菜夢と琥珀は目を合わせて手を振る。
白美は完全に無視されていた。
朝っぱらから騒がしいのは慣れたが、好きではないので
佳夢は、その場を離れる。
「にしても、彼女ねえ...。」
廊下を歩きながら、佳夢は考え込む。
「うーん...。取りあえず、誰かクラスの女子を彼女と言う名目で
連れて行って、適当にごまかすか。
あ、でもなんかそれサマーウォーズっぽいぞ。」
などと独り言をつぶやきながら。
取りあえずは部屋に行き、学校へ向かう準備をする。
そして、午前九時。
学校の教室で補習が始まった。
そして、授業の内容は諸事情により飛ばす。
授業が終わり、友達と帰ろうとしたその時。
廊下を歩いていると、一人の女子が佳夢の横を通った。
その瞬間。辺り一面に広がる香り。
それは、決して家では味わう事のない香りであった。
顔も、悪くはなかった。寧ろいい方であった。
ただ不思議なのは、それほどまでに可愛いのに、
何故一度も会った事がないのか。
「あー。あの子あれだ、転校生の子。」
横を歩いていた友達が、その女子を指さして言う。
「え?転校生?」
「うん。去年の九月に来た子だよ。名前は、えっと——。」
友達は考えるようにして、急に思い出したようで顔を上げる。
「押崖愛子。」
それが、佳夢が初めて押崖愛子を見た瞬間であった。