複雑・ファジー小説
- Re: —神達の冒険記 ( No.6 )
- 日時: 2012/08/01 20:11
- 名前: ガリュ (ID: yycNjh.Z)
〜1話 『神の子、アルフォンス』 【1】
バシャアッ
バケツ一杯分の水が太陽の光を反射しながら少年の頭にかかった。金髪の髪から水滴がポタポタと落ちる。水をかけた女性はすごい形相で近所迷惑になるくらい叫んだ。
「帰れ!!この町から出ていきな犯罪者め!!」
しかし少年からは何の反応もなくただうつむいているだけ。女性は家の中に入るとバンと音をたててドアを閉めた。少年は唇を噛み締めて歩き始めた。少年は歩きながら肩にとまっていたドラゴンをそっと撫でてやるとドラゴンだけに聞こえるような小さな声で呟く。
「また…追い払われちゃった…。」
この少年はアルフォンス=アイヴァリー。神の息子だ。そう、神だから人間に嫌われているのである。『異界戦争』に加わった神の血縁者だから、と。そして肩にいるドラゴンはシャイン=アーサライト。今は小さいが本当は大きなドラゴンなのである。
町を出るとすれ違う人が2、3人程。そのほとんどが旅人や隣の町に出かけた人たち。
暫く歩いていると横の茂みから青いワンピース(ドレス)を着た少女が現れた。少女の体には枝などで引っかけたのか傷がたくさんあり服も少しボロボロ。
アルフォンスが声をかけようとすると少女は恐ろしいものに追われているかのように後ろを振り向いてすぐにどこかへ走っていった。
そして走っていった少女を追うかのように茂みの中から大きい熊ほどの大きさの怪物が飛び出してきた。
怪物の頭と尾はクロヒョウで体は熊、背中からは青色の魚の背びれ。そう、『合成獣(キメラ)』だ。アルフォンスはヤバイと思い、合成獣を追った。
少女が気付いた頃には大きな大木の木の下にいた。少女は全身の力が抜けたようにその場で座り込んだ。息はまだ荒い。
しかし休んでいる暇などない。匂いを嗅ぎ付けてすぐにやってくる。が、もう立つのも苦難の程に疲れていた。少女が座り込んでいるとポタポタッと少女の前に滴が落ちてきた。雨でも降るのかと思い上を見ると木の上に先ほどの合成獣が涎を流していたのだ。
グワッと少女に襲い掛かる。少女には逃げる力もよける力も残っていない。ダメだ、と思って目を瞑った瞬間、ズガンッとものすごい音が聞こえた。
少女はおそるおそる目を開くと先ほどの合成獣は空を舞っていた。合成獣は回転しながらドスンッと音をたてて地面におちた。どうやら気絶しているらしい。そして遅れて金髪の少年、アルフォンスがおりてきた。
アルフォンスは少女に歩み寄るとスッと手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?安心していいよ。やっつけたから。」
アルフォンスがニッコリと笑うと少女もつられて小さな笑顔を見せた。
「助けてくれて有難う。私はアンドレア。アンドレア=エイリー。よければ貴方の名前を聞かせてくれませんか…?何しろ命の恩人なので…。」
名前を問われるとアルフォンスは少し動揺したが名乗ることにした。
「僕は…アルフォンス=アイヴァリー。」
アルフォンスがアンドレアの顔を見るととても驚いた表情をしていた。
(ああ、きっとこの人も僕を追い払うだろう…。)
アルフォンスがそう思うとアンドレアはニッコリと笑った。
「ありがとう。助けてくれて。よかったら家にこないかしら。私の家はさっき貴方が出てきた町にあるんだけれど…いいかしら?助けてくれた人には恩を返さないとね!」
アルフォンスもわかっていた。自分の血縁者が…神が人間と戦ったことをアンドレアは知っているということを…。
だが断ることが出来なかった。温かな思いを——。