複雑・ファジー小説
- Re: ステノグラフ ロケーション ( No.12 )
- 日時: 2012/08/10 14:20
- 名前: ヲーミル (ID: Tw6t19WU)
PART 2 「異変」
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スグルは、頭を抱えていた。さっきの瞬間、一体何が起きたのか自分でも分からない。
開かれたノートの上には、黒いシャープペンが置かれている。
スグルはシャープペンの中に替え芯を入れておくタイプではない。必然的に、使っている芯が切れたら新しい芯を入れなければならない。
なのになぜ……???
それはおよそ1分前の話だ。
ノートを写している最中、短くなった芯先を見てシャープペンの頭をノックしたスグルだったが、感覚が違った。
スッキリしない、しっくりこない、なんかイマイチな反発感。これは、芯が使えないほど短くなったことを意味する。
スグルはいらっとして何度も立て続けにノックした。するとどうだろう。数回目、カチンというしっくり感が戻ってきたのだ。
「!?……」
スグルは目を疑った。自力では出てこれないはずの短い芯が、ポロリとペン先からこぼれ出たのである。
一般的なシャープペンの場合、単独で使用可能な長さよりも短くなった芯をそれ以上出すことはできない。
、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
後ろから新しい芯に押し出されなければ、ノックして短い芯が出てくるという事はないのだ。
恐る恐る再度キャップの部分を親指で押すと、新たな芯の先っぽがシャープペンの先から顔をのぞかせていた。
切断面の綺麗さから、中で折れたのではないという事が分かる。だとすれば、結論は一つ。
——もう一本の芯が、シャープペンに入っていた……
おそらくほとんどの人がこんな事問題視しないだろう。しかし、スグルは絶対に替え芯を入れることはない。
仲間のいたずらか?いや、こんな事をしても意味がないはずだ。そう思いながらスグルはちらりと後ろを向いた。
テツは黙々とノートを取っており、暇そうにしていたトシがこちらに気づいて目があった。
スグルはゆっくりと前を向いた。やはり違う。
なぜだ。謎だ、不思議だ、ミステリーだ。
その時、思考を遮るかのようなチャイムが教室に鳴り響いた。生徒たちが安堵の声を上げる。
スグルは首をかしげながら教科書などをしまいこんだ。
しかし、この後さらに不可解なことが光陰高校を襲う。