複雑・ファジー小説
- Re: ステノグラフ ロケーション ( No.18 )
- 日時: 2012/08/17 21:16
- 名前: ヲーミル (ID: XTi5ys1I)
- 参照: 肝心なところで馬鹿な奴ら。
PART 1 「急襲」
1
男子寮は上空から見るとL字型をしている。短い方から部屋番号が付けられている訳だが、両端には非常用の階段がある。
廊下は短いし、いざとなったら外に出れる。逃げれる。そういう意味では304号室はかなり良い部屋だ。
四人は部屋を出てすぐ右に曲がり、そのまま突き当たりのガラスドアを押し開け、非常用階段へと出た。
普段は極力使用を控えるように、と言われたが、別に使うなとは言われていないので全く問題はない。
「いそげいそげ」「押すなコケるだろ!」「きゃっ!今お尻触った!」「ユズハの触りたい奴なんていないよ」
最後のテツは見事に裁きの鉄拳を食らい、派手に後ろに吹っ飛ばされた。螺旋階段というのは本当に不便だ。
カンカンという独特の足音を鳴らしながら、ようやく地にたどりついた四人は急ぎ足で寮前の並木通りへと向かう。
「……ここは何も起こっていない、と——」
先頭だったトシが舐めるように周りの様子を見ながら言った。スグルもうなずく。とりあえず大丈夫のようだ。
「噴水の方に行くか」
校舎から続く道をまっすぐ行くと、通称『噴水広場』と呼ばれる小さな噴水のある広場に出る。(そのままだ)
ここから男子寮と女子寮へと道が別れているのだが、やはりここにも異変は起きていないようだった。
「っかしいなあ……絶対あれは何かあったって」
「校舎の方か?」
トシが舌打ちをして、テツが並木通りの向こうに見える校舎を見つめた。
「体育館の方も見てみないと駄目かもよ?」
しかし、ユズハが言ったその時。
イギリス風のガス灯を模した街灯の隣に備え付けられているスピーカーからツ——ッという入電の音がした。
即座にトシが口元に指を立てる。2秒ほどした後、教頭の声が聞こえた。
『えー生徒の皆さん、及び教職員の方々に連絡させていただきます。
只今、校門前に不審に思われるトラックが止まっています。危険ですので、生徒の皆さんは全員、寮の自室へと——え?』
「え、じゃないどうした!」
トシが腹を立てたように怒鳴った。いや、腹を立てている。
不審なトラック?さっきの振動と何か関係が……?
しかし、放送はすぐに入った。
『緊急連絡、緊急連絡。トラックの中から出てきた10人ほどの不審者が、光陰高敷地内に強制侵入。
繰り返す、多数の不審者が敷地内に強制侵入。生徒の皆さんは今すぐ帰寮し、外に出ないでください』
「10人ほどの不審者って……どういう事だ?」
スグルは首をかしげた。トシが首を横に振る。
「分からん。とりあえず、ユズハは寮に戻ってくれ。俺達は校門に——」
「はぁっ!?何言ってんの!あんたらが行って何になんのよ!ちょっと超能力っぽいことが使えるからって——」
「q(゜д゜ )ウルセェ!!寮の中でサキの事待ってろ。来なかったら俺らが探し出す」
「「俺は帰るよ(´∀`)」」「許さん」
まだ何か言いたげなユズハを睨みつけ、トシはテツとスグルを半ば強引に引っ張って校舎の方へと向かった。
「……死んでも知んねーかんなー!」
ユズハはべーっと舌を出して女子寮の方へと駆けて行った。