複雑・ファジー小説
- Re: 【ヲーミル】 ステグラ 【→K】 ( No.58 )
- 日時: 2012/11/03 16:35
- 名前: K (ID: DFWrRuID)
PART6 『次元』
1
その少し前、トシとテツは少しずつ、物陰の間を縫うようにしながら男達の集団をつけていた。
線路わきの路地を、等間隔で並んでいるオレンジ色の外灯が照らしている。
トシが建物の裏に身をひそめ、十分距離が開いた所で出て行こうとする。
が、テツに制服の端を引っ張られて、中腰のままトシは動きを止めた。
「どうした?」
無声音でトシは聞く。テツは困ったような顔でトシを見上げた。
「もしかしてさ、もしかして、もうあいつら、俺たちのこと気付いてんじゃないかね」
「なんで」
「気付いてて、なんか危なっかしいところに連れ込んで、二人まとめて……」
「アホか」
わなわなとふるえるテツの頭に、拳を落とす。テツが声を上げずに、殴られた箇所を両手で覆った。
「つかまってる本人はどんだけ辛いと思ってる。ぱっぱと連れ戻して、帰ってコーヒー牛乳飲むぞ」
「……あいあいさー」
少しだけ笑ったテツを視界の傍に、トシは飛びだした。
すでに敵は次の交差点(といっても信号はないし、人通りもない)を左に曲がっていた。
横に並ぶと見つかりやすい。トシは素早く反対側の電柱の裏に身を寄せた。
ちらりと先ほど隠れていた建物の裏に目をやると、テツが膝をついていた。
電柱と壁の隙間から敵が曲がり切ったのを確認すると、指で合図して二人で飛び出す。
音をたてないように、左側の雑草道をゆっくりと進んで、先ほど男たちが曲がった交差点の手前で止まった。
動くな、と手でテツを制してから、頭の部分だけをすっと消して向こうをのぞきこむ。
首から上がないのを見てか、うっ、とテツが声をあげた。
バカヤロウ、と心の中で呟く。
あたりを見回すと、敵の集団が立ち止まっているのが見えた。
来たか、と上半身を乗り出すと、先ほどまでいなかった、武装していない男が何人かいた。
トシはその数を数える。
「マッチョと、おっさんと……弱そうなチビしもべってところか」
見えるだけで三人。マッチョの男だけが白いノースリーブを着ている。
ほかの二人はなんだかよくわからないスーツのようなものを着ていた。
「おっさんがマントと来てる。見てらんね」
そう呟くと、テツが「何してんの?」と後ろから聞いてきた。
「わからねぇけど……もう少し待ってみ——」
トシは思わず息をのんだ。
青白い光が、サキを含む男たちを包み込み、大きな半球状に広がった。
非現実的な色合いの中で、男たちの姿が次第に薄れていく。
トシは直感した。
——マズイ。
「テツ走れ!!」
トシは叫んで、テツを待たずに走りだした。ここで逃してはすべてが水の泡だ。
「ちょっ!?」
「早くしろ逃げられる!」
あっという間にテツが横に並ぶ。しかし、謎の青い半球は見る間に小さくなっていった。
男たちの姿はどこにもない。
半球はすでに高さ1mほど。だが、行くしかない。
「何あれ!?」とテツが叫ぶ。
「飛び込むぞ!!!」
「えっ!」
——トシは、消えていく半球にスライディングをかまして飛び込んだ。
テツがどうなったかは、知らない。