複雑・ファジー小説
- Re: 神喰い【オリキャラ募集中】 ( No.115 )
- 日時: 2012/08/30 20:43
- 名前: saku ◆vSik97dumw (ID: SkZASf/Y)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
第三話、カラス
光栄の学校襲撃。
あれから三日たち、今日は土曜日。
黒風は街に出かけていた。
黒風の休日は基本的に一人だ。
友達がいないというわけでは無く、一人が好きなのである。
ただ、今日の黒風は一人では無かった。
何故なら。
「ぬわっ!?ぬ、主様よ!あ、あの鉄の塊いきなり走り出しおったぞ!?」
隣に見た目10歳の幼女、八無がいるからである。
「あー?あれは車っつって人間が乗る乗り物だよ」
光栄が襲撃した翌日から、八無は黒風のそばに常にいる様になった。
流石に黒風の妹、雪がいる時は影に戻るが、それ以外はほぼずっとこの調子である。
八無は余程世界が不思議な様で、キラキラと目を輝かせ何から何まであれは何じゃこれは何じゃと聞いてくる。
黒風も一度晴明に聞いたのだが。
『あー、あの子にとっては世界に出るのははじめて何よ、せやから見る物全てが珍しいんやろなぁ、ま、我慢しいや、あの子は今までアンタの中から世界を眺める事しかできひんかったんやから』
との事だ。
しかし、やかましいことこの上ない。
(……でも、晴明の言ってる事が本当なら……こいつは12年間、ずっと俺の中に閉じ込められてたんだよな)
そう考えると、このはしゃぎ様も仕方ないと黒風は思った。
ただ、一つだけ問題がある。
それは。
「のう!主様よ!儂は次はあそこに行きたいのじゃ!連れていってくれぬかの!」
目立つのだ。
非常に。
まあ、当たり前である、何しろ八無は見た目は美幼女、さらに儂、じゃの、などの古めかしい言葉使いをする。
目立ちたく無い黒風にとっては迷惑この上ない。
しかし。
「わーったから走るな、こけるぞ」
と、言った黒風の顔は笑っている様に見えた。
何だかんだ言っても黒風は根っからのお人好しなのである。
黒風と八無はそんなたわいない会話をしながら街を抜けていった。
夜景の見える高層マンション。
黒風との戦いの後、光栄はそこにいた。
ここは彼の今の拠点であり、住居でもある。
(まさかあそこまで戦えるとは予想外でしたね……)
先程の黒風との戦いを思い返し、次の作戦を考えていると。
プルルルルルルルと、光栄の携帯電話が着信を告げた。
光栄はそれを手に取り、ディスプレイに標準される文字を見て。
チッ、と舌打ちをしてから通話ボタンを押した。
「……もしもし」
と、光栄が言うと。
『あ!もっしもーし!光くーん?』
電話の向こうから、若い女の声がした。
「光くんはやめてくださいと言ったはずですが」
『あっははは、そうだっけー?まあ、気にしないでよー♪』
その時。
電話の向こうからガン!ゴガン!という音が聞こえるのを光栄は確認した。
「……何をしてるんですか?」
『んー?えーっと……ゴミ掃除?』
「……またどっかの組織を潰してるんですか」
『だってさー、こいつら弱いくせにムカつくんだもーんっと!』
電話先の女が言うと。
ゴシャッ!っと音がした。
彼女が何をしているかというと。
「本当に……人を殴りながら電話なんてしないでくださいよ」
そう、彼女は人を殴りながら電話をしているのである。
それも沢山の人間に囲まれている中で。
『だって退屈なんだもーん、よいしょっと!おし終わりー♪』
「はぁ……で?何の用ですか?まさか暇だったからとかじゃ無いですよね?」
『んー?それもあるかなー』
「……切りますね」
『待った待った!冗談だって!』
「だったら早く本題に入ってください」
『もー……せっかちだなぁ光くんはー、んじゃ本題に入るけどぉ、今日さーそっちにアタシの部下が行くのね?んで、一応それの報告?みたいな』
それを聞いた光栄は。
「何故?私一人で充分ですが?」
と、少しイラつきながら言った。
『だってさー、今日光くん負けちゃったんでしょー?』
しかし、そんな光栄の様子など気にせずに電話先の女は痛い所を付いていく。
「っ!」
『あ、言っとくけどこれアタシの考えじゃ無いからねー?これ、あの人の命令だから、逆らっても無駄よん♪』
電話先なので顔を見ることは出来ないが恐らくニヤついた笑顔でいるのが言葉から読み取れる。
「……わかりました」
『ん、じゃ、よろしくねー♪ばーいばーい♪』
そう言って電話先の女は一方的に電話を切った。
「……全くイラつく人ですね」
光栄はしばらく手に持つ携帯を眺め、そしてそれを机に置き、寝室へと向かった。
空に浮かぶ月が、やけに青白く光っていた。