複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【オリキャラ募集一時休止】 ( No.160 )
日時: 2012/09/16 00:30
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: SsOklNqw)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode

第四話(パート3)

「いやぁごめんね、えーっと……」
「黒風っす、いえ、大丈夫ですけど」
申し訳なさそうに謝る雲井に黒風は自然に答えた。
昼休み、先生に呼び出され、職員室へと向かった黒風を待っていたのは今日この学校に来た教師、雲井 拓海と大量のダンボール箱だった。
わけがわからず、呼び出した教師、伊森に聞いてみると。
『あー、このダンボール、理科室に運ぶんだけどよ、本来なら雲井先生の担当なんだが……ちょーっと一人じゃ無理があるっつーことでさ、暇そーなお前に手伝ってもらおうと思ってよ、それで呼んだわけさ』
と、いうわけで、黒風は今雲井と一緒に大量のダンボールを運んでいるのである。
「本当は僕が一人で運ぶべきなんだけど……ちょっとこの量は運べなくてね」
「ああいえ、気にしないでください」
ヘラヘラとした笑みを浮かべながら謝る雲井に返答し、黒風は廊下をダンボールをもって進んで行った。

「ふー、これで終わりかな?」
「そーみたいっすね」
あの後、さらに一往復して、ようやく全てのダンボールを運び終え、黒風と雲井は理科準備室にいた。
しばらくそこで休み、黒風は立ち上がると。
「じゃ、俺は教室に戻ります」
そう言って理科準備室を出ようとした。
しかし。
「あ、待ってよ黒風くん、まだお礼をしていないじゃないか」
と言って、雲井は黒風を呼び止めた。
「お礼?いえ、いいですよ、そんなもの」
黒風は断り、そのまま準備室を出ようとしたのだが。
「まあまあ、受け取ってよ、僕の気持ちだと思って」
雲井はそう言うと、腰のウエストポーチを探った。
(うーん、マジでいいんだけどな……まあ、くれるっつーなら貰っとくか)
貰っておく方が後々ギスギスした感じにならずにすむと思い、黒風は。
「じゃあ、いただきます」
と言って立ち止まった。
「うん!じゃあ、これが君へのプレゼントだ」
そう言って雲井が振り返ると。

「!?」

黒風は身動きが取れなくなった。
直後。


「……くくっ、くくくっ、あっははははは!単純だねぇ黒風くん!こんな簡単な手に引っかかるなんてさ!」


雲井の態度が豹変した。
ヘラヘラとした笑顔は狂喜に満ちた笑顔に変わり、ゾッとする。
「な……!お前、何したんだよ……!」
黒風が怒りを込めて問う。
「んんー?何故君にそんな事を教えなきゃいけないんだい?そもそも知る必要も無いだろう?」
雲井はそう言うと、ウエストポーチから数本、試験管を取り出した。
中には液体が入っている。
「これはねぇ、君へのプレゼントさ、あえて言うなら……死の片道切符ってとこかな?」
「な、何でこんなことを……!」
「あー……ま、理由はこれかな?」
雲井はそう言うと、白衣のポケットからメダルを取り出した。
そこには。
「天照……!」
天照のマークが刻まれていた。
「ピーンポォーーン!大正解、さてと、あんまりグズグズしてるとめんどくさいからなぁ」
雲井はそう言って手に持っている試験管を握り直した。
試験管がカチャカチャと音をたてる。
「じゃあ、さよなら黒風くん」
雲井はそう言って試験管を黒風に投げつけた。
(くそっ!ダメだ!動けねぇ……!)
黒風の目の前にまで試験管が迫り、死を覚悟したその瞬間。
黒風の肩を誰かが掴み、後ろに引っ張った。
倒れる黒風、そして、引っ張った誰かはそのまま準備室に入り。
カシャン!という音を響かせ、試験管をキャッチした。
「オイオイ雲井先生、そりゃあねぇんじゃ無いかい?」
黒風の目線からは背中しか見えなかった、しかし。
黒風はそれを知っていた。
煙草臭い黒いジャケット。
シワのついた黒いズボン。
ボサボサの髪、気だるそうな声。
その全てに覚えがあった。


「先生ってのは、生徒を殺すためにいるんじゃねぇ……護るためにいるんだからよ」


それは最も教師らしくない教師にして生粋のロリコン。
そして、黒風のクラスの担任教師。
伊森 童の姿だった。