複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【イラスト募集中!】 ( No.179 )
日時: 2012/10/14 04:46
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: KDFj2HVO)
参照: http://cdn.uploda.cc/img/img5058745d44670.png

第四話(パート6)

「らぁっ!!」
「ギュァッ!!?」
気合いと共に振り下ろされた刃が、巨大な蟻の頭部を切り飛ばし、ゴトンという音をたて蟻の頭部が地面に落ちた。
残された体はシュワァァァアと音をたて、煙になり、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
「ふぅ……今ので5匹目か、先生、雲井の場所はまだわかんねぇのかよ?」
額の汗を拭い、黒風は伊森に問いかける。
「あー、さっぱりだわ、神力たどっても雲井は神力下げてるみたいだし喰いかすは多いし……どうしたもんかね」
雲井が理科準備室から姿を消し、黒風と伊森は雲井の捜索を続けていた。
しかし、雲井はどうやら神力を極限まで低下させ、さらに大量の喰いかすを放ち、黒風と伊森を撹乱。
結果、黒風と伊森は、いまだに雲井を見つけられていなかった。
(くそっ!探しても探しても喰いかすばっかり……このままじゃ他の先生や生徒にまで被害が出るぞ……!)
黒風は焦りながら必死に頭を働かせる。
すると、その様子を見た伊森が。
「おい」
と、声をかけてきた。
「なんだよ、早く雲井を探さないと……」
明らかにイラついた様子で黒風は伊森に返答を返す。
「少し落ち着け、焦り過ぎだ、そんなんじゃ見つけられる物も見つけられないぞ」
焦る黒風をなだめるように、伊森はそう言った。
「……そう、だな、わかった、落ち着いて……」
黒風が落ち着きを取り戻し、そう呟いた瞬間である。
学校のスピーカーからブツッという音、続いてザザーっというノイズが混じる。
ノイズが消え、スピーカーから。
『あ、あー、うん、成功ですね』
という声が聞こえた。
「「!?」」
その声は、雲井のものだった。
『えー、黒風君に伊森先生、この放送はあなた達のみにむけて放送しています、連絡します、神喰い状態を解き、直ぐに屋上に向かうように』
「神喰い状態を解いて屋上にこいだと?そんな見え透いた罠、誰が……」
苛立った声で黒風が呟くと。
『ちなみに』
と、うむを言わせない口調でそう言った。
『拒否権は無いですよ?何故なら、人質を取らせてもらったのでね』
「人質……?」
黒風の額に嫌な汗が浮かぶ。
『鳴道 雷牙、伊森先生、あなたの教え子であり黒風君の親友、でしょう?』
「「!?」」
『これから5分以内に神喰い状態を解いて屋上に来なければ、喰いかす達に鳴道君を襲わせます』
「……なるほど、喰いかすはただの囮じゃなかったって訳か」
苛立つ黒風の隣で、静かに冷静に伊森は呟いた。
『それでは、残念な結果にならない事を期待してますよぉ?』
そう言うと、ブツッと言う耳触りな音を残し、雲井はスピーカーを切った。
「くっ!?先生!早く屋上に……!」
「……ちっ、明らかに罠だが、行かないわけにもいかないしな……仕方ない、急ぐぞ!」
「ああっ!」
返事を聞いた瞬間、黒風は全力で走り出した。
もう、失うわけにはいかない。
大切な世界も、大切な人々も。