複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【イラスト募集中!】 ( No.193 )
日時: 2012/12/27 00:16
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: Rn9Xbmu5)
参照: http://cdn.uploda.cc/img/img5058745d44670.png

第四話(パート10)

閃光がほとばしり、チシャァァァァア!という音と共に、視界が真っ白にそまる。
続いて、バリィン!と、大きな音がして校舎の窓が割れた。
ギュァァァァア!と、悲鳴を上げて倒れる蟻、そして、校舎の壁はまるで火事でも起こったかのように真っ黒に焦げていた。
「……へ?」
目の前の光景が信じられず、雷牙は間の抜けた声を出す。
「ルルル……ルァァア!」
雷牙があたりの光景に呆然としていると、先ほどの攻撃でも生き残っていた蟻の一匹が起き上がり、再び雷牙に襲いかかった。
(うおっ!?やべっ!)
慌てて雷牙は後ろに思いっきり飛んだ。
しかし、その飛んだ距離は普段の脚力からは考えられないほどのものだった。
足に力を込めて思いっきり飛んだ雷牙は、廊下の端まで飛び、壁にぶつかってやっと止まった。
「がっ!?っう……」
背中を思いっきりぶつけ、鈍い痛みがはしる。
壁にぶつかった雷牙を追いかけ、蟻が襲いかかる。
「ギュァァァァア!!」
「おっぁぁぁあ!?」
雷牙の体を引き裂こうとした顎を紙一重で避け、そのままバックステップで距離をとる。
そのまま蟻の攻撃を避ける。
(なんだ……?体が軽い……?)
ただ立っているだけなのに、前よりも楽になっている。
さっきまでとはまるで体の動きが違う。
さっきまでは見えなかった攻撃も、行動も、すべて見える。
それどころか。
(……ここだっ!)
ドゴオッ!
「ギュァアッ!?」
攻撃を加える余裕すら出来た。
殴られた蟻は苦しそうに悲鳴をあげた。
(いける……これなら勝てる!)
勝利への希望を見つけ、雷牙はファイティングポーズをとった。






「なんだ……なんだあれは……!?」
校舎の窓を割り、溢れ出た閃光と雷鳴を聴き、雲井が驚嘆を隠さず声を出す。
「なんだって……この感じはどう考えても神喰いでしょうよ」
顔色一つ変えず、伊森はそう答えた。
「神喰い……ってことは晴明か……?」
「いや、晴明さんの神力とは違う……てか、大きさからして明らかに違う」
「……どちらにせよ、早く終わらせた方がいいですね」
しばらく校舎を眺めてから、雲井はボソッとつぶやいた。
足に力を込め、雲井は思いっきり前に飛ぶ。
「シッ!」
右手に握った洋傘を振るい、黒風と交戦する。
ガァン!と音が響き、黒風の刀と雲井の傘が交差する。
「そんな単調な動きで攻撃が当たると思ったかよっ!」
雲井の傘を受け止め、黒風は不敵に吐き捨てた。
「へぇ……ずいぶん自信があるようですねぇ」
「てめーみたいなやつに負けるほど弱く無いからな……それに」
「俺もいるからなっと」
後ろから拳を握り伊森が雲井に襲いかかる。
「チッ!」
舌打ちをして、腹立たしげに雲井は横に飛んだ。
「逃がすかっ!」
伊森の攻撃を避け、横に飛んだ雲井を無理な姿勢で黒風が追う。
「フッ……」
瞬間、雲井の口元が鋭く歪んだ。
周りを包む殺気、切り裂くような寒気。
「黒風っ!逃げろっ!」
思わず伊森が声を荒らげる。
しかし、言うのが遅かった。
パンッ!パンッ!とまるで現実味の無い音がして、二発の弾丸が放たれた。
貫いた黒風のコートが、主人の血を吸って赤く染まっていった。