複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【イラスト募集中!】 ( No.198 )
日時: 2012/12/29 23:00
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: gK3tU2qa)
参照: http://cdn.uploda.cc/img/img5058745d44670.png

第四話(パート11)

「黒風っ!!」
貫いた弾丸と、赤く染まったコートを見て、伊森が叫んだ。
黒風は撃たれた時の体勢を徐々に崩し、その場に倒れた。
「がっ……は……」
苦しそうに咳き込み、血を吐く。
「残念でしたね黒風くん、僕の本当に得意な武器は、拳銃なんですよぉ……」
左手で拳銃を弄びながら雲井が黒風を見下ろす。
「じゃ、止めとしますか」
そう言うと雲井は左手の拳銃を黒風の頭に向けた。
その時。
ガァン!と、鈍重な音が響き、伊森の蹴りが雲井の拳銃を蹴り上げた。
伊森はそのまま重力にまかせ、蹴り上げた足を振り下ろす。
「らぁぁっ!」
危機を感じ、雲井は後ろに一歩飛んだ。
「いっつぅ……邪魔しないでくださいって」
「なめんなよ雲井、俺の前で生徒を殺せると思うな」
両手を軽く握り、雲井を正面に見据え、伊森は構える。
(あの出血量からして10分くらいが限界か……その前にケリをつけるっ!)
「シッ!」
素早く計算を終え、脱兎の如く飛び出し伊森は膝蹴りを繰り出す。
繰り出された膝蹴りを、雲井は傘で受け止める。
ギャァァン!と、音が響き、雲井が後ろに滑る。
「ぐっ……!受け止めたのにこの威力ですか、大口をたたくだけはありますね」
「これで終わりだと思ってんじゃねぇぞ……」
続けて伊森は左足で雲井の頭を蹴り抜こうとした。
雲井は少ししゃがみ、手にもつ傘で伊森の顔を突こうとする。
しかし、伊森は無理やり左足を戻し、背中をそらして傘をよけ、そのまま両手を地面につけた。
そのまま逆立ちをして、雲井の頭を叩きつけるように右足を振り下ろす。
ガァンッ!と、音を立て、雲井がその一撃を傘で受け止める。
そのまま二人とも後ろに飛び、距離を取る。
手に汗を握るような攻防が繰り返され、時間はどんどん進んでゆく。
黒風はただ、その光景を見ている事しか出来ない。
(くそったれ……体が動かねぇ……)
倒れたまま、黒風はそんな事を考えていた。
(このままだと、死ぬぞ俺……)
死、黒風の頭の中をその一文字が支配していく。
(けど……このまま死んだら、誰が雷牙を助けるんだ……?)
ふと抱いた疑問に寒気を感じる。
(今、先生は雲井と戦ってる……それなのに、こんなところで寝てる場合じゃねぇだろ……)
体に力を込めようと、必死に動こうとするが、血を流しすぎたのか指先さえ動かない。
(動けよ……うごけ、うごけ、うごけ、ウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケ!)
黒風が自身の体を無理やり動かそうと力を込めた時。
「オ……オオォォォオォオ……!」
と、地鳴りのような声が出て、黒風の瞳に変化がおきた。
黒かった瞳はその色を紅に変え、細く鋭く形を変える。
その瞳は、まるで蛇のようだった。
そして、次に肉体にも変化がおきる。
肌の色が、黒く変わっていく。
徐々に、しかし確実に、まるで影に侵食されるかのようにその色を黒く染めていく。
そのままそばに落ちていた刀をにぎり、黒風が立ち上がる。
「っ!?黒風っ!?」
異変を感じ、黒風の方を振り向いた伊森が驚嘆の声をあげる。
「ガッ!!!」
その声に一切反応せず、黒風はまるで獣のように雲井に向かって飛び出す。
「なっ!?」
驚く雲井を黒風が左手で殴る。
「がはっ!!?」
そのまま服を掴み、屋上の床に雲井の体を叩きつける。
バキャァァア!と、音がして、亀裂が入る。
「ルォォォォオオォオ!!」
獣のように叫び、黒風は再び拳を振り上げ、再度雲井の体に振り下ろす。
バキャァァァァアァァア!と先ほどよりも大きな音がして、亀裂が広がり、次の瞬間、屋上の床が砕けた。
「うっおおっ!?」
足場が崩れ落ち、三人は下に落下した。
黒風の瞳は、雲井の姿だけを捉えていた。