複雑・ファジー小説
- Re: 神喰い【イラスト募集中!】 ( No.207 )
- 日時: 2013/02/21 13:00
- 名前: saku ◆UJE6I8544Q (ID: HhjtY6GF)
第四話(パート13)
声が、聞こえる。
薄れた意識の中、頭に響く声。
誰かが呼んでいる。
「……ここ、何処だ?」
ふと気がついた場所は、見知らぬ場所だった。
空は何処までも曇天で、太陽の光が届かない、暗い世界。
周りにあるのは、崩れたビル。
「お、落ち着け、さっきまで、俺は学校にいたんだ」
だが、落ち着いて考えても、自分が何故ここにいるのか、検討もつかない。
崩れたビルに腰掛け、周りを見渡す。
すると。
グジュッ……と、不気味な音がして、影が蠢いた。
「なっ……!?」
そのまま影はビルにまとわりつき、吸い付き、侵食していく。
数分過ぎると、そこにあったビルは綺麗に消えていた。
「なんだよ……マジで何処だよここ……」
不安と恐怖を感じ、辺りを見渡す、すると。
「恐怖、不安、絶望感、ソレラハ貴重ナ感情ダ、大事ニ取ッテオケ」
機会的で、感情の無い声が、背後から聞こえた。
「っ!?だ、誰だっ!」
声の聞こえた方向に、黒風が振り向く。
「誰ダトハ酷イ言イ草ダナ、我ガ主」
台詞とは裏腹に、その人物は傷付いた様子も無く、ビルに腰掛けていた腰を上げ、飛び降りた。
その人物は、黒に埋め尽くされていた。
長い黒髪は風になびき、黒のコート、黒のズボン、黒の手袋。
さらに、その顔は黒い布で大半を覆い隠していた。
しかし、その服の隙間から見える肌は、対象的に、抜けるように白かった。
身長は高めで、おそらく170はあるだろう、しかし、筋肉質では無く、むしろ細く、弱々しく感じてしまいそうな姿だ。
だが、何か引っかかる。
弱々しそうに見えるのに、不気味な空気をまとっている。
八無や光栄とは違う、威圧される圧倒的な力では無く、本能を刺激する恐怖。
ぞわりと鳥肌がたつ。
「……マア、コノ世界デハ始メテ会ッタ事ニナルカラ、一応自己紹介ヲシテオコウ」
それは、ゆっくりとこちらに近付くと、名乗った。
「俺ハオ前、俺ハ一、俺ハ全、俺ハ神、俺ハ人、俺ハ希望、俺ハ絶望、俺ハ有、俺ハ無、ソシテ、俺ハ影ダ」
壊れたラジオの様に、人間味も、感情も見当たらない声。
抑揚は消え、まるで命無き物の様に、雑音のような声がする。
「お前は……俺?どういう意味だ……?」
ひやりとした何かが頬を伝い、全身を悪寒が駆け巡る。
「ソンナニ怯エルナ、今日ハ挨拶ニ来タダケダ」
「お、怯えてなんていねぇよ!」
「強ガルナ、言ッタダロウ?ソレハ貴重ナ感情ダト、大切ニシテオケ」
うるせぇよ!と、言おうと黒風が口を開いた瞬間。
パキャッという音がなり。
世界にヒビが入った。
空間が、まるでプラスチックのようにビビ割れていく。
「な!!?」
「……モウ、時間カ」
「じ、時間?どういう事だ!?」
「我ガ主ヨ、ココハ、オ前ノ世界デアルノト同時ニ、俺ノ世界デモアル、ダガ、出来ル事ナラバ二度トココニハ来ルナ、俺ハ本来ナラバ存在シナイモノ、光サス世界ニ迷イ込ンダ闇ナノダカラ」
その人物は、黒風の問いかけには答えなかった。
「何を……言ってんだよ……?」
「サラバダ主ヨ、忘レルナ、己ノ意志ヲ」
黒風の二回目の問いかけにも答えず、その人物はそう言った。
その言葉を皮切りに、世界のヒビが広がり、バキャキャキャキャッ!と、致命的な音を立て、砕けた。
「うっぁ!!?」
純粋な光と熱が黒風の体を包み、黒風は意識を失った。