複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【久々の更新と長期の放置についてのお詫び】 ( No.211 )
日時: 2013/03/23 23:21
名前: saku ◆UJE6I8544Q (ID: Bf..vpS5)

第四話(パート14)

「ぅ……」
光と熱感の渦巻く道を越えると、そこは見覚えのある、いつもの風景だった。
「春っ!? 大丈夫か!? 」
ふわふわとした意識のまま、隣から叫び声が飛んできた。
「あ……らい……が? 」
「ああ! そうだよ!俺だよ! 」
「……! お、お前!大丈夫だったか!? 」
雷牙の叫びで、一気に覚醒した黒風は、感情のまま、雷牙に問う。
「こっちの台詞だ馬鹿野郎!俺に黙って何をこんな無茶してんだよ! 」
返答は、激昂と共に黒風に返ってきた。
「ぁ……」
「てめぇは! 俺のダチだろーが! なんで言わねぇんだよ! 無茶すんじゃねぇよ!」
「……悪りぃ、雷牙」
友人の激昂を聞き、黒風は静かに謝った。
「たく……無茶しすぎなんだよ、春は、もっと頼れよ」
ホッと、安堵の表情で、雷牙は黒風にそういい、肩の力を抜いた。
黒風も、ここで始めて笑顔を見せた、その時。
「はいはーい、感動的なシーンの所で悪いけど、そうグズグズはしてられねぇよー?」
と、隣からまるで覇気を感じない伊森の声が流れて来た。
「あ……そ、そうだ!雲井!雲井はどうなったんだ!?」
「あぁ……雲井は、死んだ」
「え……?」
「自殺だ、恐らく情報が漏れるのを危惧したんだろう」
伊森の口からあっさりと出る、『死んだ』という言葉に、黒風は言葉を失った。
「じ、自殺って……!そんな……」
「ショック受けるのもわかるけどな、そんな暇はねぇぞ、自殺したって事は、敵さんの方に情報が送られてる、恐らく俺らの顔はもう割れてる、気合入れねぇと死ぬぞ」
「……わかった」
覚悟はしていたはずだった。
だが、それでも揺さぶられる。
人が死ぬという事実は、頭で理解しただけでは、ショックが薄れる事は無かった。
「あ、それから春に伊森先生!俺にもちゃんと説明してくれよ!」
暗い雰囲気を壊したのは、何も知らない雷牙の声がだった。
「あー……そういや雷牙もいたなぁ、わーった、ちゃんと説明してやる」
「うっし」
一同は、この場所にとどまるのは危険と判断し、一度晴明とも合流し、場所を移す事にした。





「で、結局こうなるのかよ……」
ため息をつき、諦めたように黒風は呟いた。

「まあ、ここが一番近いしなー」
「そーそー、あんまり細かい事気にしてると禿げるでー?」
「誰が禿げるか、まあいいや、とりあえず、雷牙に説明しねぇとな」
「あっ!そうだよ!教えろよ!?」
「ああ、じゃあ、清明、よろしく」
「なんや、僕任せかい、まあ、ええやろ、実はな、雷牙くん……」





「はぁ〜……そりゃまた、すげぇ話だな」
清明の話を聞き、雷牙はぼけっとした顔で、そう言った。

「お前……軽いなー……」
雷牙の余りにもふわふわした答えに、呆れたように黒風は答えた。
「いや、だってよぉ、いきなりいろいろ言われたからよー」
頭をかきながら、苦笑いで雷牙はそういった。
「まあ、そこは置いといて、雷牙くん、これからどうするんや?」
黒風と雷牙が和気藹々と話していると、横から清明が雷牙に訪ねてきた。
「どう……って?」
「これから、神喰いとして生きるか、それとも、何もなかったように生きるかって事や」
「っ!おい!清明!」
清明の、雷牙への問いかけに黒風は激昂する。
「……春、ここは黙っててくれ」
激昂した黒風を見て、珍しく真剣な表情で、雷牙は黒風に言った。
「雷牙っ!馬鹿な事考えんなよ!?今ならまだ引き返せるんだ!俺と同じ」
「化物になるな、か?」
「っ……ああ、そうだ」
雷牙の鋭い一言に、黒風は、一瞬言葉につまったが、答えた、しかし。

「ざっけんなっ!」

黒風の返事に、雷牙は怒りをもって返答とした。
「なっ!?」
雷牙の突然の激昂に、黒風は眼を見開いた。
「化物!?ふざけんなよっ!だからなんなんだよ!さっき言っただろーが!お前は俺の友達だろーが!」
黒風に向かって、雷牙は吠えたてる、そしてそのまま。
「おい!清明!俺は、神喰いになるぞ!」
清明にそう吠えた。
「なっ!?おい!やめろ!馬鹿な事考えんな!」
「やだね、俺はやめねえ」
黒風が止めるのも聞かずに、雷牙は噛み付くように答えた。
「俺は……もうやなんだよっ!お前と並んでいたいんだよ!友達が頑張ってる時に、俺がいたいのは後ろじゃない!俺は、隣にいたいんだ!」
黒風の顔を見ながら、雷牙は叫んだ。
「春……お前がなんと言おうと、俺は神喰いになる」
「……チッ、お前、やっぱり馬鹿だよな」
雷牙の本気を見て、諦めた黒風は、ボソッと静かにそうつぶやいた。
「るせー、ほっとけ」
少しばつが悪そうに、雷牙はそう答えた。
「まあ、僕もそうすべきやと思うで」
へらへらと笑いながら、清明が話す。
「どういう事だ?」
怪訝な顔をして、黒風が清明に訪ねる。
「雷牙くんが神喰いの力を得たって事はもうばれとる、つまり、雷牙くんはこれから、天照に優先的に狙われるやろな」
「なるほど、つまり、その時にある程度の力があった方がいいと、そういう事だな」
「ご名答、その通りや」
黒風を指差し、清明が軽やかに答える。
「ま、まあなに言ってるのかよくわかんねぇけど、これからよろしくな、清明、春」
そう言って、雷牙はスッと手を差し出した。
「ん、おう」
「よろしゅうなー」
和やかな雰囲気に包まれ、黒風と清明は、雷牙の差し出した手を握り返した。