複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【第二章スタート】 ( No.217 )
日時: 2013/10/19 13:31
名前: saku ◆UJE6I8544Q (ID: HijqWNdI)

第五話(パート2)

柔らかな日差しを浴びて、少年、黒風 春は薄っすらと目を開いた。
上半身を布団から起こして、しばらくぼーっとする。
「ねむ……」
ぼさぼさの頭を少し掻いて、もそもそと布団から出る。
机の上の鞄を取ろう……として、机の上に鞄がない事に気付く。
「……あれ?」
黒風は、いつもなら、教科書類を全ていれて、前日に机の上に置いておく、しかし、今日は置いてない。
「なんでないの……?」
しばらく考えこんでから、黒風はハッとした顔になり、呟いた。
「今日、体育祭じゃん……」





ぼさぼさの頭をどうにか見られる程度にはとかし、体育着を着て、眠たげに黒風は家のドアを閉めた。
「……だり」
家を出て一番最初に言う言葉がこれである。
夢も希望もない。
「ひゃっはー春ぅーー!体育祭だぜ体育祭ぃーーー!」
のろのろと気だるそうに投稿する黒風の後ろから、ネックレスを付けた金髪の少年、鳴道が、まるで真逆のテンションを撒き散らし、背中を叩いた。
「うるさい、だるい、今日は学校休む」
「いやいやいやいや、体育祭だぜー?」
「だから休むんだくそが、なんでこのくそ暑いのに外で運動するんだめんどくせぇ」
もともと運動をする時には力をセーブしなければいけない春にとって、体育祭とは辛いイベントでしかないので、無気力に気だるそうに呟いた、しかし、鳴道はそんなことを許しはしない。
しばらく考え込んでから、彼は呟いた。
「……赤井にいいとこ魅せるチャンスなのに(ボソッ」
本当に小さい声でボソッと呟いただけだった、が。
「しゃあ!行くぞ!1位以外は認めねぇからな!」
効果は抜群であった。
「おっしゃぁぁぁい!!やるぞおおお!」
異様なテンションで声を張り上げる中学生2人に、周囲はドン引きであった。













ベッド、机、椅子。
飾り気も何もない、素っ気ない真っ暗な部屋。
両手をポケットに突っ込み、その部屋の主は静かに立ち上がった。
「ちょっくら、ちょっかい出してくるか……」
口の端をゆがませ、ニヤリと笑う。
首を鳴らし、右腕をポケットから出して、頭を掻き。
「行くぞ、凛紅りんく
少し後ろを振り向き静かに呼び掛けた。
「あぁ、わかった」
呼び掛けに応じた声の主、凛紅は、紅の翼を羽ばたかせ、男の肩に停まった。
その姿は、一言で言うなら、朱烏。
真紅の羽を羽根を持つ、美しく、禍々しい烏だった。
「さぁてと、黒風を名乗ってこれだけ暴れてるってこたぁ、少しはできるんだろうなぁ……?」
残虐に口を歪め、まるで新しい玩具を見つけたように、男は楽しそうに呟いた。
「【憤怒】の俺が直々に出て行くんだ……がっかりさせんなよ……」
ドアノブを回し、男はバタンッ、と乱暴ににドアを閉めた。
男の名は千世ちせ蓮弐れんじ
【レッドキャップ】【朱烏】【修羅】、彼は様々な名を持つ。
だが、彼の本質を見た人は口を揃えてこう言う。
奴は、正に【憤怒】に相応しい男だった、と。
彼の名は千世 蓮弐。
天照幹部、七つの大罪が1つ。
【憤怒】を名乗ることを許された男である。