複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【第二章スタート】 ( No.224 )
日時: 2013/11/16 08:30
名前: saku ◆UJE6I8544Q (ID: sE.KM5jw)

ジリジリと照りつける太陽の下、簡易テントの下で少年、黒風 春は待機していた。
「くそあちぃ……」
気だるそうに空を見上げ、青空と太陽を睨み付ける。
「早く終わんねぇかな……」
額の汗を拭って、黒風は前を向いた。

黒風の中学の体育祭は、他校とは少し変わっている。
黒風の中学の体育祭は、他校との合同で行われるのである。

故に、黒風の通う中学が半壊したところで、中止には出来ないし、また、施設も他校のものを借りれば済むので無らない。

そして、この体育祭は、それこそ合同でやるが故に広大な施設を利用し、それこそオリンピックのように大規模で多くの種目がある。

バスケ、水泳、陸上などなど。
それぞれの学校で様々な競技が行われる。
つまり、何が言いたいかと言と。
「……移動くそだりぃ……!」
暑く照りつける太陽の下、徒歩と自転車で他校間を移動するのは、なかなかハードな事だった。

かと言って、雷牙や赤井が出場している競技(特に赤井)を無視してだらけているのは罪悪感により出来ず、律儀にも各校舎を巡っているのであった。

さらに、次に向かう会場では赤井の出場するバレーボールが開催されるのである、自然とペダルを踏む足が全力になってしまうのは仕方のないことだった。
そんな調子で肩で息をしながら自転車を漕いでいると。
「やほー、黒風ー、元気してるかー?」
関西の訛りが混ざった特徴的な声が横から飛んできた。
「あ?清明かよ……これが元気に見えるか?」
横をチラッと確認し、見知った顔があることを確認すると、うっとおしそうに顔を前に向け、黒風は言葉を発した。
「あはは、見えへんなー、ズタボロや」
何がおかしいのか、にこにこと頬の筋肉を緩めて、清明はカラカラと笑った。
「……なあ、雷牙、どうだ?」
少し躊躇した様子で、黒風はボソッと清明に問い掛けた。
「んー?雷牙くんかー?いろいろと努力はしてんねんけどなー、なかなかなぁ……」
黒風の問いに、少し申し訳なさそうに清明は返答した。
あの学校での一戦の後、神喰いになる決意をした雷牙は、ここ数日、清明に付きっ切りで稽古をつけてもらっていた……が。
結果は惨敗、神を呼び出すどころか対話すら出来ていない状態である。
「俺の時は数分で出来たのになぁ……」
「あのなぁ、普通あんな短時間で対話して、屈服させるとか無理やで?」
「マジで?」
「当たり前やろ、あの時は僕が荒療治で無理やり意識を神の元へぶち込んだから短時間で終わったんや、普通の方法じゃもっと時間がかかるわ」
「ふぅん……まあ、別に今すぐどうこうってわけじゃねぇしな、気長に待つか」
「せやなぁ……」
たわいもない話を、ペダルを漕ぎながら2人は話していく。
暑いだのだるいだのと言っても、なんだかんだやっと訪れたこの【日常】を黒風は嬉しく思っていた。
ただ、幸せな時間は長くは続かない。
【日常】のそのすぐ裏には、【非日常】が潜んでいるのだから。